第17章 幸せな音が溢れる世界で
それからしばらく歩き続け
「……着いた」
私は、目的地である蝶屋敷の門の前までやって来た。
私が無事蝶屋敷に辿り着いた事を確認したムキムキねずみは、最後に
ムキムキムキムキっ
と、自信に満ち溢れた様子で私に筋肉を見せつけると、流石天元さんが鍛えたねずみと言うべきか、地面にピョンと飛び降り、あっという間にいなくなってしまった。
1人になった私は
「……ふぅ…」
改めて、蝶屋敷の門をじっと見る。
……この門をくぐった先に…しのぶさん……それから杏寿郎さんがいるんだ…
そう思うと、なんだか足がズンと重くなったような気がした。
「……行こう」
私は自分に言い聞かせるようにそう呟いた後、ゆっくりと蝶屋敷の出入り口目指し歩き始めた。
ドキドキと騒ぐ胸を落ち着かせながら扉に手を掛けたその時
「…え…?」
まだ少しも力を込めていないというのに、扉が自動的に開き始めた。
戸惑い固まっている間に、視界を覆い尽くしていた超屋敷の扉は無くなり
「…っ鈴音さん!!!」
水色の蝶飾りと、水色のリボンを腰につけたすみちゃんと目があった。
「驚かせちゃってごめんね?大丈夫?」
目を丸くしながら私を見ているすみちゃんにそう尋ねると
「はい!私は全然平気です!それよりも、鈴音さんが来てくれて良かったです!煉獄様が毎日毎日鈴音さんが来ていないかどうか、それはもう悲しそうに聞いてくるので…私たちはもう不憫で不憫でたまらなかったんです」
すみちゃんはそう言いながら、私の手をその小さな手でパッと取った。
その言葉に、なんと言って良いか分からず
「……ごめんね…中々…気持ちが落ち着かなくて…」
床に視線を向けながら、ボソリと答えた。
「いえいえそんな!謝らないでください!そんなつもりで言ったわけではありませんので!それよりも、煉獄様の病室にご案内しますので、付いて来てください!」
すみちゃんはそう言うと、踵を返し、私の手を引きながら玄関の中へと戻って行く。