第17章 幸せな音が溢れる世界で
天元さんは、私の問いに、ゆっくりと瞬きをしながらうなずくと
「あぁ。お前ひとり…いや腹の子も含めりゃ2人だな。派手を司る神、宇髄天元様は、お前ら5人養えるくらいの甲斐性なんか余裕であんだよ。あいつら3人とも、お前のことをえれぇ気に入ってるみてぇだしよ。許可してやらないこともねぇよ」
そう言いながら、私の頭を更にワシワシと撫でた。
ここにずっといていい
腹の子も一緒に養ってやる
……それってつまり…
天元さんに言われたそれらの言葉を頭の中で反芻し、たどり着いた結論は
「……私を…4人目の嫁にしてくれるってことですか…?」
というものだ。
すると
「………は?」
ドスのきいた天元さんの声と共に
ミシミシミシミシ
「…っ痛ぁぁぁぁぁい!」
私の頭を撫でていた筈の天元さんの手が、私のそれを鷲づかみにしてきた。頭蓋骨が割られてしまうんじゃないか…と思ってしまう程の力に身悶えていると
「だ、れ、が!テメェみたいな色気の欠片もねぇ女嫁にすっかよ!テメェみたいなちんちくりんに欲情すんのはせいぜい煉獄くらいだ!大体テメェ!煉獄にしか抱かれたくねぇとか言って俺様のなけなしの気遣いを無下にしたやつが、俺の嫁になれるなんざ本気で思ってんのか!?」
「…今その話を蒸し返す必要ないじゃないですか…っ…離してくださいぃ…!!!」
「うるせぇ!居候に決まってんだろうがこの阿保んだら!!つぅか馬鹿な事抜かしてねぇでさっさと煉獄のとこ行ってこい!!!」
怒り大爆発の天元さんに、これ以上反抗することも出来ない私は
「…っわかりました…行きます…行きますから…いい加減その手を放して下さい…!」
そう答える他なく
「…ちっ…二度と調子に乗んじゃねぇぞ!」
「………すみませんでした」
「謝る暇があんならさっさと行け!今!すぐにだっ!」
「……はぁい」
蝶屋敷で療養をしている杏寿郎さんに、半ば強制的に会いに行くことになってしまった。
それでも、天元さんとこうして話したことで、私の心を覆いつくしていた不安の感情は随分と軽くなっていた。