第17章 幸せな音が溢れる世界で
「あの場にお前がいないことに気が付いた煉獄の取り乱しよう…もの凄かったんだぜ?隠の制止も聞かず、折れた足引きずって、口から血ぃ吐きながら走りまわってよぉ」
私はそんな天元さんの言葉に
フイッ
と顔を反らし、天元さんが視界に入ってこないよう畳のめをじっと見つめた。
すると、卓を挟んで反対側にいたはずの天元さんがさっと私の隣に現れ、顔を反らしていた私の顎をガシッと乱暴に掴み、無理やり視線を合わさせられてしまった。
天元さんは、赤茶色の瞳でジッと私の目を睨むように見ると
「あいつは、胡蝶からお前の無事を聞いてようやく手当を受けた。胡蝶のやつに、俺でもビビるくらいの迫力でどやされながら、お前の無事を聞いて心底嬉しそうに笑ってたんだ」
半ば私を責めるような口調でそう言った。そんな天元さんの様子に
「……」
視線を合わせていることが出来ず、私はそれを斜め下に反らし、再び畳のめをジッと見た。
それでも天元さんは、私の目を見続け
「なのにお前は、動けるくせにちっともあいつに会いに行こうとしねぇ。あいつは、己の力のみで、最後まで戦い抜いたってのに……お前ってやつは、なんでそんなに大馬鹿野郎なわけ?」
さも呆れたといわんばかりの口調でそう言い、それらの言葉は、私の心を大きく抉った。
「…っ…私…だって……私だって!みんなと一緒に戦いたかったです!…じぃちゃんや…天元さんや…雛鶴さんまきをさん須磨さんに鍛えてもらったこの身体で……戦いたかった!でも…そうさせてもらえなかったんです!そう出来なかったんです!私は…私は……」
しのぶさんの指示のもと、半ば無理やりここまで連れてこられたのは事実だ。けれども少なからず
"これ以上この子を危険な目に合わせなくて済む'.
と思ってしまったのも、紛れもない事実だった。
「…っ…みんなと戦うことより……この子の無事を……心のどこかで望んでたんです……」
雛鶴さんまきをさん須磨さんは、こんな私を受け入れてくれた。こんな私を叱り、励ましてくれた。