第17章 幸せな音が溢れる世界で
あの激しい戦いから5日が経過した。
鬼舞辻無惨を倒し、悲願の勝利を得た鬼殺隊ではあったが、決して手放しで喜べる状態でもなく
お館様
あまね様
珠世さん
たくさんの隊士達
柱の誰もその命を失わなかったとはいえ、失われた命は少なくない。中には、柱を守ろうと、自ら肉の壁になる事を選んだ隊士もいたそうだ。
怪我を負った隊士は、蝶屋敷と鬼殺隊とゆかりのある病院に別れて療養をしており、戦いが終わりを迎えたとて、"平和な毎日"と言える状態になる迄はもう少し時間を有しそうだった。
そんな中私は
「お前、いつまでここに居座るつもりだ?」
「…可能な限りいつまでも…ですかね?」
「はぁあ!?テメェまじふざけんな。さっさと出て行け」
「………」
「無視してんじゃねぇよっ!」
あのまま、音柱邸に居座っていた。
台所で、雛鶴さんまきをさん須磨さんと仲良く早めの昼食の準備に取り掛かっていたが、"お前ちょっとこっち来い"と、天元さんに首根っこを掴まれ、居間に連れてこられた私は、天元さんと卓を挟んで向き合い座っていた。
ケロリとしている天元さんだが、その身体にはたくさんの包帯が巻かれており、まだまだ療養が必要な状態だ。
毎日のように"出て行け"だの"さっさと蝶屋敷に行け"などと言われていた私だが、まだ十分に動けない天元さんと
"天元様。鈴音は身重なんですよ?もっと気を遣ってあげてください"
私を甘やかしてくれる雛鶴さんまきをさん須磨さんのお陰で、無理矢理追い出されるようなことはなかった。
もちろん私自身、このままでは駄目だと思っている。
「毎日毎日お前の鴉と煉獄の鴉が来てんだろ?あいつ、足の骨折っちまってるし、胡蝶から絶対安静だって言われてるから身動き取れねぇんだぜ?」
幸いにも(我ながらなんて酷い考えなんだとは思っている)杏寿郎さんが足を折っているおかげで、向こうから現れることはなかった。
私とて杏寿郎さんに会いたくない訳ではないし、むしろ会いたくて仕方がない。
けれども、杏寿郎さんに会うということはすなわち、私の身体に、杏寿郎さんとの子が宿っている事を伝えなければならない…と言う事だ。
私はまだ、それを杏寿郎さんに伝える勇気がない。
それ故に、あの奇妙な空間で別れてから、未だに杏寿郎さんと顔を合わせることが出来ていないのだ。