第16章 私が守るべきもの
そんな3人の姿を見ていると、先ほどまでの悲しさや悔しさとは違う、幸せな涙が込み上げて来た。
私は、腕に抱いている和に頬ずりをし
「…和も…お疲れ様…知らせに来てくれて…ありがとう」
「とっても疲れたのぉ…でも鈴音の為に頑張ったのぉ」
「うんうん…本当にお疲れ様」
随分とくたびれて見える身体をいたわるようにさすってあげた。
けれども
「杏寿郎が鈴音にすっごく会いたがってるの!だからすぐに会いにいくの!」
和の口から発せられたその言葉に
「…っ…!」
私は一気に現実へと引き戻された。
……そうだ…鬼との戦いは終わっても……私自身の問題は…何一つ解決してない…
杏寿郎さんになんと伝えればいいか
杏寿郎さんがどんな反応を見せるか
杏寿郎さんがこの子の存在を受け入れてくれるのか
それらを考えると、先ほどまでの晴れやかな気持ちが嘘のように、心が暗く沈んで行った。
そんな私を
「……鈴音?どうかしたの?」
和が、不安げな表情で見上げて来る。私はそんな和に向け
「……なんでもないよ……でも…私も…杏寿郎さんにすごく会いたいけど……今はちょっと…無理なんだ…だから…もう少し落ち着いたら…会いに行くね」
作り笑いを浮かべ、そう言う事しか出来なかった。
私の返事を聞いた和は
「…わかったの!じゃあ和、ひとりで杏寿郎のところに行って、鈴音は元気だったって伝えてくるの!それはいい?」
小首をかしげそう尋ねて来た。
「そうしてもらえると私も助かる。でも、少し休まなくて大丈夫?」
「大丈夫!和、鈴音と杏寿郎のためなら、羽がもげても頑張るのぉ」
「…ふふっ…気持ちは嬉しいけど、和の羽がもげたら私が悲しいから、無理せず行ってね?」
「わかったのぉ~」
そう返事をした和は、ばさりと羽を広げ飛ぶ態勢になる。