第16章 私が守るべきもの
すると、あれだけ大騒ぎをしていた須磨さんとまきをさんがピタリとその口を閉じ
「「………」」
先程までの騒々しさが嘘のような静けさが訪れる。
私も
「……っ…」
漏れてしまいそうになる嗚咽を堪えようと、顔全体を覆うようにしていた手を口に持っていき、グッと押さえつけた。
しばらく沈黙が続いた後
「「っええええええええ!?!?」」
須磨さんとまきをさんの大声が重なりあい、音柱邸全体に響き渡った。
すると
「鈴音が驚いちゃうでしょう?二人とも少し落ち着いてちょうだい」
そう言いながら雛鶴さんが、私の涙を優しく拭ってくれた。
「落ち着けって言われても…というか!どうして雛鶴さんは驚かないんです!?まさか知ってたんですか!?」
「別に知っていた訳じゃないのよ」
「だったらなんでそんなに落ち着いてるのさ!」
「なんとなく、そうじゃないかなって思っていたの」
「なんですかそれ!?だったら私たちにも教えてくれればよかったじゃないですか!」
「そうだよ!」
「確証もないのに、勝手なことは言えないでしょう?」
「でもでも~!」
言い争うような3人のやり取りに
「…っ…やめて…下さい…」
口を覆っていた手を離し、力のない情けない声で割って入る。
その声は、雛鶴さんまきをさん須磨さんの耳にしっかりと届いていたようで、3人の視線が、一気に私へと向けられた。
「…っ私が…全部…悪いんです…っ…」
蓋が空いてしまった口は、もう止めることが出来ず
「…あんなに…鍛えてもらったのに…っ…あんなに…たくさん時間を費やしてもらったのに……私は…肝心な時に…戦えなくて…っ…善逸も…天元さんも…っ…引退したはずの杏寿郎さんまで…っ…戦ってるのに…私は…っ…私は…一番戦わなくちゃいけない時に…っ…何も出来ないどころか…足を引っ張ってばかりで…!」
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
涙をボロボロと溢し、ただただ謝り続けた。