第16章 私が守るべきもの
目の前まで来た須磨さんと、こちらに向かってくる雛鶴さんとまきをさん。3人の姿を同時に目にした途端
「…っ…う…ふぇ…」
「っ鈴音ちゃん!?どうしたんですか!?!?」
堪えきれない涙が、嗚咽とともに込み上げ
「…っ…ごめ……ごめんなさい…!」
泣くことしか出来なくなってしまった。
須磨さんは、そんな私を苗場さんから奪い取るように抱き寄せ
「ああああなたですか!?うちのかわいい鈴音ちゃんを泣かせたのわぁぁぁ!?!?」
苗場さんをギンッと睨みつけ、そんなことを言っていた。
「いいえ違います」
苗場さんはどうやら須磨さんとは初対面ではないようで、混乱気味に苗場さんを責める須磨さんを、軽くあしらっている。
そんなことをしている間に、雛鶴さんとまきをさんも到着し
「あんた…急に泣いてどうしたんだい!?っていうかそもそも、なんで今ここにいるのさ!?」
そう言いながら、両手で顔を覆い隠し泣く私の顔を覗き込んで来た。
その問いに対しても
「……ごめんなさい…っ…ごめんなさい」
と、ただただ謝罪の言葉を並べることしか出来ない。
そんな中
「……大丈夫…全部わかってるわ」
と、雛鶴さんが言った。
そんな雛鶴さんの言葉に
……やっぱり…雛鶴さんは……気が付いてたんだ…
と、心の中で思った。
そんな私の一方で
「え!?なんです!?何が大丈夫なんです!?私には全然話が見えません!」
須磨さんと
「泣いてないでわかるように説明しな!そうじゃないと、あんたを慰めたくってもしてやれないだろ!?」
まきをさんは、涙を止めることの出来ない私の様子に、慌て、困惑の色を濃くしていく。
そんな状況に終止符を打ったのは
「俺は胡蝶様の命令で荒山をここまで送り届けに来ました」
苗場さんで
……だめ…それ以上は…言わないで…
そんな私の願いも虚しく
「理由は、腹に子どもがいるからで、宇髄様の奥方様たちに、荒山がこれ以上無理をしないよう見張っていてもらいたいとのことです」
苗場さんは、私をここまで連れて来た理由を、包み隠さず言ってしまった。