第16章 私が守るべきもの
けれども、村田さんの方には届かず
「……っ…よし!これで俺も、しばらくの間、強い村田だ!」
村田さんは秘薬を飲み込んでしまったようだった。
数秒後、早速秘薬の効果が出てきた村田さんは
「…っ!?」
「…3人一気にとは…すごい力ですね」
左腕にしのぶさんと栗花落さん、右腕に私を乗せ
「行きます!」
ダッ
一気に木片と瓦礫の雨から抜け出した。
村田さんはそのまま、建物と建物の間にサッと入り込み
「ここなら大丈夫そうですね」
ゆっくりと私たちをその腕からおろした。
「ありがとうございます」
村田さんにお礼を述べるしのぶさんと
ペコリ
と、お辞儀をする栗花落さんの一方で
「……はぁ…はぁ…はぁ…」
私は、両膝に手を当て、乱れた息を整えるのに必死だった。
「鈴音さんのお陰で助かりましたが…随分と無茶をしてくれましたね」
しのぶさんが、厳しい声色でそう言いながら私の背中を摩ってくれる。
その間も
"行けー!進めー!"
ドドドドド
"戦えぇー!"
みんなが戦う声が、遠くの方から聴こえて来た。
すると
「カナヲ。秘薬を飲んだら、村田さんと共に、無惨と戦う柱や隊士たちを助けに行きなさい。私も、戦うことは出来ませんが、物資を整え次第そちらに向かいます」
しのぶさんが、私の背中を摩りながらそう言った。
「はい」
「任せて下さい!」
栗花落さんと村田さんはそう返事をすると
「行くぞ!」
激しい戦いの音がする方へと駆けて行ってしまった。
左右を建物に囲まれた狭い道に取り残された私としのぶさんの間に会話はなく
……だめだ…まだ…息が整わない…
「……はぁ…はぁ…はぁ…」
私の荒い呼吸音だけがあたりに響いていた。
乱れた呼吸は中々落ち着いてはくれず、しのぶさんはその間、ずっと私の背中を摩り続けてくれた。