第3章 未知との出会い、騒音との再会
慌てふためく私を尻目に
「成程なぁ」
「後でちゃんとほつれ防止しないとね」
「確かにその方法が一番かもね」
と切り替えの早い天元さん、須磨さん、まきをさんが言っている。
更に須磨さんは私の手からクナイ刺しを奪うように取ると、ズボンの横穴に手を突っ込み、私の太ももにそれを当て、ベルトを締め、それを装着させた。
「ほら!見てください!これで完璧です!」
須磨さんのその言葉に、鋏でざっくりと切れ目の入った部分に手を突っ込み、自らの太ももに触れてみる。
「…確かに。これなら、隊服で身を守れるしクナイも…取り出せます」
突拍子もないと思っていた須磨さんの行動だが、あっさりと、発生した問題を解決してしまい、その発想の柔らかさに感心してしまった。
「鈴音」
天元さんに再び呼ばれ、私は天元さんにきちんと正面から向き直るように身体の向きを変える。
「はい」
私がそう返事をすると
「俺からお前に与えられることはもうねぇ。その知識と技術を自分のものにして、いかに使いこなせるようになるかは全てお前次第だ。しっかりやれよな」
天元さんは、きっちり揃えた中指と人差し指、そして上に伸ばした親指で、私の顔を指差すかのようにしながらそう言った。
"はい。ありがとうございます"
…と、本来であれば言う流れだ。けれどもそうはいかない。
「…あの…天元さん」
「なんだ。礼なら、派手に、好きなだけ言え!」
「あ、違います。まだ終わりにされては困りますので」
そんな私の言葉に
「はぁ?なんだよ。なんか不満でもあんのか?」
と苛立った様子を少しも隠すことなく天元さんは言った。
「…私…まだ天元さんの前で1度も日輪刀を振っていないんですが…」
そう。私は、まだ天元さんから忍の訓練しか受けられていない。
忍の訓練を受けていた間、もちろん一人でいつも通りの鍛錬をこなしてはいたが、出来ることならそちらの稽古もつけれもらいたいと思っていた。けれども、この流れでは、明らかに終わりを迎えてしまう雰囲気だ。