第16章 私が守るべきもの
「さっき善逸と3人で落ちた時と同じように、響の呼吸の型を使うんです!音の波をなるべく狭くして、長く続くようにします!だから絶対に、私から離れないで下さい!」
「離れないでって言っても…!建物が崩れるのをやり過ごしたとして、その後はどうするんだよ!?助けが来るまでずっと型を出し続けるつもりか!?」
「っそんなのわかりません!でも今はそうするしかないんです!」
そんなやり取りを交わしていると
「愈史郎が外に飛ばしてくれるの!だからそれまで堪えれば大丈夫なの!」
「っうわぁぁぁ!いつの間にそんなところにぃ!?」
しゃがみ込む村田さんの脚の間から、和がヒョイと顔を出した。
「この空間を作り出した鬼を、愈史郎が乗っ取ってたの。でも無惨にバレて、その鬼はもういないの!だから崩壊するの!でも愈史郎が出してくれるのぉ!」
「愈史郎だぁ!?あいつマジで何者なんだよ!?!?」
「すみませんがこの距離感で大声を出すのはやめてもらえないでしょうか?あなたの唾がカナヲのかわいい顔に飛びますので」
「申し訳ありませんっ!!!」
村田さんが口を閉じたことで、私の耳に届いてくるのは、建物が崩れ行く音だけになった。
けれども
「……今は鈴音さんに頼ることしか出来ません。ですが、決して無理はしないで下さい。ここは地下のはずなので、いざとなれば、私たち3人で天井に向け攻撃を放ち、地上を目指すこともあるいは可能なはず」
しのぶさんが、私の右肩に、日輪刀を持っていない左手を置きながら言った。
私は、そんなしのぶさんの顔をじっと見つめ
今までほとんど何もしてこなかったんだ…この3人と…和の事くらい…私が守らないと…!
内心そんなことを思いながら
「……はい…」
と、返事をした。
その直後
ミシミシミシッ
天井に大きな亀裂が入り
「…っ崩れるぞ!!!」
土砂が零れ始めた。
私は
スゥゥゥゥゥゥッ
と、深く呼吸をし
「……響の呼吸肆ノ型…空振波浄」
しのぶさん、栗花落さん、村田さん、それからその脚の間にいる和を包み込む音の波を作り出した。