第16章 私が守るべきもの
しのぶさんはそんな私を、見とれてしまう程の大きな瞳でじっと見て来た。
「………」
「………」
栗花落さんと村田さんが、無言のまま睨みあう私としのぶさんの様子を、遠巻きにうかがっている。
「…し…師範…」
栗花落さんが心配げにしのぶさんを呼んだ直後。
しのぶさんは、いつのも穏やかな表情から、眉を吊り上げ怒った表情へと変わり
「私が鈴音さんに戦うよう言わない理由。それを誰よりも理解しているのは、あなた自身ではありませんか?」
厳しい口調でそう言った。
「…っ!!!」
しのぶさんが発したその言葉の内容は、明らかに、私が子を身籠っていることを分かっているそれで、私は目を大きく見開きながら固まってしまう。
それでも、何とか言葉を発しようと口を開いたその時
ギギィッ!!!!
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
「っなんだ!?」
建物全体が大きく軋み、揺れ始めた。
激しい揺れで立っていることも困難になり、壁に手を着く。
着いた手から感じる振動は、どう考えても普通のものではなく、私は壁に耳を当て、その音を聴いてみた。
バキバキッ!!!
ガガガガガガ!!!
……建物全体が…崩れてるの…!?…どうして…急に…!?
そう思ったものの、今は悠長に考えている場合ではない。
私は壁から急いで離れ
「っ鈴音さん!?」
しのぶさんの腕を掴み、隣り合って立つ栗花落さんと村田さんの方へと向かった。
……音が…どんどん大きくなっていく…崩れるまで…もうすぐだ…!
「みんな出来るだけくっついて!私に身を寄せてください!」
「くっつく!?こんな状況でどうするつもりなんだ!?」
「大怪我したくなければ、さっさと鈴音さんの言う通りにした方が良いかと思いますよ」
「そう言われましてもぉ!!!」
村田さんは、私がお願いした通りにくっついてはくれたものの、かなり混乱しているようで、こめかみからダラダラと汗が流れていた。