第16章 私が守るべきもの
「…鈴音さん。大丈夫ですか?」
しのぶさんが、私にそう問いかけた直後
「鬼舞辻復活!鬼舞辻復活!死傷者多数発生!動ける柱たちは大至急鬼舞辻の元へ!大至急鬼舞辻元へ!!!」
和が、バサバサと激しく羽を動かしながら騒ぎ始めた。
私は、どうするべきか指示を仰ごうと、しのぶさんへと視線を向ける。
それは栗花落さんも村田さんも同じだったようで、3人の視線が同時に、しのぶさんへと向けられた。
しのぶさんは、一瞬考えるそぶりを見せると
「…時間的に考えて、私が行っても戦いに参加することは出来ません。ですが怪我を負った人たちの手当は出来ます」
伏せていた視線を上げた。
そして
「私たちも、行きましょう」
と、力強く言った。
「「「はい!」」」
しのぶさんは栗花落さんと村田さんの顔を順番に見ると
「カナヲ。村田さん。あなた達2人は、念のため秘薬を飲む準備をしておいてください」
「わかりました」「はい!」
栗花落さんと、村田さん。2人とも、しのぶさんの指示に従い胸ポケットを探ると、秘薬を取り出した。
私はそんな二人の姿を見ながら
「……しのぶさん…私は…?」
思わずそう尋ねてしまう。
お腹にいる子はもちろん大切だ。でも…いや、だからこそ、自分の持ち得る力をもって、この子の未来を脅かす存在と戦わなければならない。
戦う決心は、とっくに出来ていた。
…大丈夫…この子は……杏寿郎さんの子だもん…きっと一緒に頑張ってくれる…
そう思っていたのに
「鈴音さんは、私と一緒に怪我を負った隊員の手当をお願いします」
しのぶさんから告げられた私への指示は、私が望んでいたものとは違った。
また戦わせてもらえない
それを理解した私の心に、どうしようもない焦燥感が込み上げてくる。
「…っどうしてですか!?手当も大事ですが…今は少しでも多くの戦力が必要なはず!私は、栗花落さんや村田さんよりも階級が上で、怪我もしていません!今この場で一番戦えるのは…私のはずです!だから私も、2人と一緒に戦います!」
柱であるしのぶさんに逆らうなど、あるまじき行為だ。
頭の片隅でそう思いながらも、どうしても気持ちを抑える事が出来なかった。