第16章 私が守るべきもの
「…と、いう事です」
しのぶさんと村田さんのそんなやり取りを見ていた杏寿郎さんは
「わかった!では嘴平少年も連れて行かせてもらう!耳のいい我妻少年と感覚の鋭い嘴平少年がいれば、上弦の壱がいる場所にいち早くたどり着けるだろう」
「よっしゃー!!!上弦の壱の頸は俺様がいただくぜぇ!!!」
気合たっぷりな伊之助君は”猪突猛進っ!”と叫びながら走り始め
「そちらの方向か!行くぞ!我妻少年!」
杏寿郎さんも、伊之助君を追いかけ走り始めた。その直後、善逸が慌てた表情を浮かべながら、私の方に振り返ってきた。
私は、善逸だけに聞こえるような小さな声で
”杏寿郎さんにはまだ何も言わないで”
と呟き、小さくなっていく善逸に手を振った。すると善逸は、複雑そうな表情を浮かべながらも
コクリ
と大きくうなずいてくれたのだ。
杏寿郎さんに善逸、それから伊之助君の姿が完全に見えなくなった頃
「それでは、私たちも、付近の鬼を狩りながら進みましょうか」
しのぶさんが、3人が進んで行った方向とはまた違う道を指さしそう言った。
そんなしのぶさんの言葉に、栗花落さん、村田さん、それから私の3人は
「「「はい」」」
声を揃え、返事をしたのだった。
”上弦の壱撃破。時透無一郎並びに不死川玄弥が重傷を負ったものの命に別状なし”
確実に勝利へと近づいていく気配が、先の見えないこの状況に、希望を感じさせてくれる。
幸いなことに、私たち4人が進む道には、村田さんと栗花落さんの2人で対処できる程度の鬼しか出現せず、私は”鈴音さんは、響の呼吸で2人の補助を”というしのぶさんの指示に従い、直接鬼と戦うことはほぼなかった。それでも
……こんなに長時間動くのは久しぶりだし…やっぱりこの子がいるせいなのかな………身体が…動かなくなって来た…
放つ型の質が、段々と落ちて来ていた。