第16章 私が守るべきもの
それでもやはり、納得してもらえる説明をする時間はないので
「…っとにかく今は、私の言葉を信じて、言った通りにして下さい!」
私には、そう言うことしか出来なかった。
村田さんはしばらく怪訝な表情をしていたが
「…そう言えば、前にもこんなようなことあったな。わかった!荒山さんの事、信じるよ!で、俺はどうすればいいんだ!?」
そう言って、私の顔をジッと見て来た。
「ありがとうございます!特別することはないんです!きちんと着地する!ただそれだけでいいんです!」
「……っ…わからないけどわかった!」
「お願いします!」
私は、村田さんとの会話を切り上げ、床との距離間を測ることに集中する。
……そろそろ……よし…今だ…!
身体の隅々まで行き届くように深く呼吸をし
「響の呼吸肆ノ型…っ空振波浄!」
1番最初に落下した時と同様
「…っ何だこれ…!?」
音の波で落下の勢いを減らしていく。
そして
「脚!力入れて村田さん!」
「言われなくてもわかってるって!」
ダンッ
善逸を背負った村田さんの足の裏が床に着き
タスッ
その後すぐ、私も無事、着地をすることが出来た。
……良かった…3人とも…って言っても善逸は村田さんに背負われてただけだから何もしてないけど……まぁとにかく、無事降りられて良かった
ホッと胸を撫で下ろしていると
「…………凄い。荒山さん…今の何?俺…あんなの見たことないんだけど…」
村田さんが、瞳が落っこちそうなほど目を見開きながら、私の事をジッと見て来た。
すると
「今のは鈴音姉ちゃん独自の呼吸、響の呼吸の肆ノ型さ!」
善逸が、とても誇らしげにそう言った。
すると村田さんは
「いや…お前に聞いてねぇし」
"げんなり"という表現がピッタリと当てはまりそうな表情を浮かべ、善逸の事を見た。
「…つぅかお前、もう自分で歩いてくれ。いい加減俺も疲れた」
それから、背負っていた善逸を下に降ろした。