第16章 私が守るべきもの
けれどもハッと何かを思い出したような表情を見せ
「…ごめん……今回は俺……」
眉の両端を下げ、申し訳なさそうに言った。
善逸は先の獪岳との戦いで、脚に怪我を負っている。全く使い物にならない訳ではないが、今この状況は、善逸が無理をするべき時じゃない。
私は、善逸に向けにっこりと微笑み
「大丈夫。今度は姉ちゃんに任せなさい」
昔よりもいくらか硬さを増したほっぺを、ムギュッとつねった。
善逸は"姉ちゃん…"と呟いた後、キッと村田さんの顔を睨みつけ
「村田さん姉ちゃんに無理させたらぶっ飛ばすから。しっかり着地して下さいよ」
と、背負われている立場にも関わらず、そんな事を言ってのけた。
そうなれば当然
「はぁぁあ!?お前人が優しくしてやれば何様のつもりだよ!大体この中で1番階級高くて強いの荒山さんじゃん!?さっきだって、俺たちが斬るのに手こずってた鬼の頸、一撃で斬ってたからな!?そんな小さい身体でなんでだよ!?さっき庇った俺が馬鹿みたいだったからなぁ!?」
村田さんが、腹を立て言い返すのは当然の結果で
……っ村田さん…余計なこと言わないでよ…!
善逸が眠っている間に、跳び、回り、惜しげもなく雷の呼吸を使っていたことがバレてしまうと、非常に焦った。
村田さんの言葉を聞いた善逸は、驚き、大きく目を見開いた。そして
「ちょっと姉ちゃん!どう言うこと!?」
と言いながら、私の腕をグッと掴んできた。
けれども
「…っほら!床が見えて来たよ!悪いけど、集中するから話しかけて来ないで」
落下の終わりが見え始め、私はこれ幸いと思いながら、善逸の問いを無視させてもらった。
村田さんは、そんな私と善逸のやり取りを、首を傾げながら聞いているようだった。
「…っ後でちゃんと説明してよね!」
「はいはいわかりました。…村田さん!」
「…っはい!」
「床まで10メートルくらいの位置まで来たら、私が落下の勢いを相殺するので、そのまま着地をしてください!」
「相殺!?どうやって!?」
村田さんは、私の言葉がいまいち信用出来ないのか、慌てた様子でそう尋ねて来る。