第16章 私が守るべきもの
優しい村田さんは、善逸が目覚めた後も"もう少し休んでおけよ"といって、善逸を背負い歩いてくれた。
しかも村田さんは、善意を背負いながらも、自ら率先して先頭を歩いてくれた(善逸は1番安全な真ん中を歩きたいと騒いでいた)。
私は、そんな村田さんの様子に
……村田さんてこんなに頼りになる人だったんだ…知らなかったなぁ
などと、物凄く失礼な事を考えながら、その後ろを歩かせてもらった。
歩いている最中、和を含めた鎹鴉達が"愈史郎さんの目"を通じ、お館様の後を継いだ輝利哉様から直接指示を受けている事を知らされとても驚いた。
そして、そんな愈史郎さんの目を通じ、誰が誰と行動を共にしているかを知る事ができた。
和の話では
天元さん、炭治郎君、水柱様の3人が上弦の参
岩柱様、霞柱様、風柱様、風柱様の弟さんの4人が上弦の壱
と交戦中らしく、天元さん、霞柱様、そして弟さんの3人は、既に秘薬を飲んでいる状態だと言うことだ。
そして私が最も気掛かりだった杏寿郎さんは
しのぶさん、栗花落さん、伊之助君と4人で上弦の弐
と交戦中という事だった。
……良かった…
杏寿郎さんが、他でもないしのぶさんと共にいるということが、私の不安をかなり軽くしてくれた。
そんな状況報告を受けている最中
「お館様より報告なの!宇髄天元!冨岡義勇!竈門炭治郎!上弦の参撃破!上弦の参撃破!」
と、和が羽を大きく広げ、声高らかに教えてくれた。
「…っ天元さん…炭治郎君…凄い…凄いよ!」」
「上弦の…頸を取ったんだ!行ける!このまま行けるぞ!」
「はい!」
「じゃあ俺たちはこのまま戦いが無事終わるのを隠れて待とう」
「何言ってんだ!お前もまだあの薬飲んでないんだろ?俺たちの戦いはまだまだこれからだ!」
「飲んでないよ!飲んでないけど、俺はもう十分頑張ったんだだぁぁあ!」
気合い十分な村田さんと、そんな村田さんに背負われた善逸の気持ちの温度差に、私は思わず苦笑いを溢してしまう。