第16章 私が守るべきもの
すると2人は
「…っ…そうだよな!ごめん荒山さん!俺たちも必死で…!」
「疲れて気弱になってしまって…すみません…!」
と、すぐに謝ってくれた。
それでも、謝られたからと言って、先ほど言われた言葉がすぐに私の中から消えてくれるはずもなく
ズキズキ
と、心が痛みを訴えていた。
もちろんそんな自分勝手な感情を表に出すことはない。そもそも、2人の発言があながち間違っていないことも事実である。
「私は全く気にしていないので!今は、鬼を倒すことだけを考えましょう!」
最近すっかりと忘れる事が多くなってしまった
"鬼殺隊士・荒山鈴音"
の仮面を貼り付け
「こいつらを倒せば付近に鬼の気配はありません!だから…頑張りましょう!」
「「はい!」」「あぁ!」
お腹の子に何もないことを祈りながら戦う他なかった。
襲いかかって来た鬼を全て倒した私たちは
「…取り敢えず、人の気配が多い方……真っ直ぐ進んでみましょうか」
「そうだな」
仲間と合流する事を目標に、移動を開始した。
移動を始めて間もなく
「…っ…ん……」
村田さんに背負われていた善逸が小さく唸り
「……あれ…?俺…寝ちゃってた…?」
ぐっすりと眠っていた善逸が目を覚ました。
私はそんな善逸へと急いで駆け寄り
「…っ善逸…!良かった…良かったぁ…!」
「っちょ…荒山さんッ!!!」
善逸を、善逸を背負っている村田さん共々抱きしめた。
慌てふためく村田さんを尻目に
「……姉ちゃん…俺…っ…やったよ…めっちゃ…頑張ったよ……!」
「…っ…うん…うん…ありがとう…善逸…本当に…っ…ありがとう…」
善逸も、村田さんに背負われた状態のまま、上半身だけ私の方へと伸ばし
「…俺のこと…誇りだって…じぃちゃんが…っ…そう…言ってくれたんだ…」
「……私も…っ…じぃちゃんと…同じ気持ち……最後の型…無茶苦茶格好よかった…」
私の事をギュッと抱きしめ返してくれた。
そのまま互いに抱き合い涙していると
「…あの……それ…俺から降りてやってくれない…?」
村田さんが、とても言いにくそうな表情を浮かべそう言った。