第16章 私が守るべきもの
ちらりと善逸の様子を伺うと、回復の呼吸を保ちながらも
すぅ…すぅ…
と、眠り始めたようだった。
私は
……善逸との約束は…善逸が戦えるように助けるってことだけだもん…手出ししないって約束したのも…獪岳との戦いだけだもん…
心の中で言い訳を並べ、日輪刀の柄に手を掛けた。
すると
「貴様その身体で戦うつもりか」
愈史郎さんが相変わらず淡々とした口調でそう尋ねて来た。
私は愈史郎さんから、ふいッと顔を逸らし
「……善逸には…内緒にしておいて下さいね」
自分勝手なお願いを押し付けた。
すると愈史郎さんは
「……俺にはお前がどうなろうと、その腹の子がどうなろうと関係ない。たが何かあった時後悔するのはお前自身だ」
と、私に向け冷たく言い放った。
「……っ…そんなの…言われなくても…わかってますよ!!!…でも…それでも…っ…懸命に戦うみんなを前に…黙って見てるだけなんて…私には出来ない…!!!」
ごめん
ごめんね
お願いだから
頑張って
私は、自身に宿る小さな命に心の中で語りかけ
「……雷の呼吸壱ノ型…っ霹靂一閃!」
最も硬い頸を有する鬼目掛け、地面を蹴った。
ザンッ!!!
「いぎゃぁぁぁあ!」
狙った頸を切り落とし、着地後すぐ体制を整え他の鬼と戦う3人に合流した。
すると
「…そうだ!君、よく考えたら音柱の継子じゃん!階級も俺たちより上じゃん!」
「そうですよ!見たところ怪我もしてないみたいだし!もっと早く助けて下さぃ!」
なんて事を言われてしまい
「……っ…ごめんなさい」
私は、刀を振りながら謝ることしか出来なかった。
けれども
「お前らやめろ!音柱の継子だろうが何だろうが、荒山さんは俺たちよりも力の弱い女の子だぞ!?そんなこと言って恥ずかしくないのか!?それに荒山さんの戦い方は先頭切って戦う物じゃない!お前たちも任務を共にした事があればわかるだろう!?」
村田さんが、ギリギリと音を立て鬼の爪と日輪刀で押し合いながらも、そんな事を言ってくれた。