第16章 私が守るべきもの
落ちていく善逸を追いかけ穴に飛び込もうとしたその時
ガッ
と後ろから肩を強く掴まれ
「……っ!?」
私は慌てて振り返った。
すると
「俺が行く。貴様はここにいろ」
そう言いながらなんの躊躇もなく穴へと飛び込んでいったのは
「…愈史郎さん…?」
つい先日まで、毎日のように顔を合わせていた愈史郎さんだった。
小さくなっていく愈史郎さんの姿に
……愈史郎さん…なんで隊服を…?
そう思うのと同時に、鬼であり、優れた身体能力を所持していると思われる愈史郎さんならば、きっと善逸を助けてくれると心の底からほっとした。
そして
「大丈夫か!?」
どこか聴いたことのある声が聴こえ、バッと声の出どころへと顔を向けた。すると
「っ村田さん!」
合同任務を何度も共にしたことのある、村田さんを含めた3人の隊士がこちらへと駆けてくる姿が見えた。
その直後
「邪魔だどけ醜女」
「…っ善逸!!!!」
意識が朦朧とした傷だらけの善逸を背負った愈史郎さんが、穴の下から戻ってきた。
愈史郎さんは、善逸を床に横たわらせると、隊服のボタンを上から順番に外していく。その行動から、愈史郎さんが善逸の手当をしようとしていることが伺い知れ、私も急ぎ、いつなんどきも持ち歩いている巾着袋の中から、止血剤と造血剤を取り出した。
村田さんを含めた3人の隊士は、善逸、それから善逸を手当てする愈史郎さんと私を取り囲むように立ち、血の匂いを嗅ぎつけ集まってくる鬼の出現に備え、あたりを警戒してくれているようだ。
村田さんは日輪刀を構えながらも
「どうだ!?助かりそうか!?顔見知りなんだよ!なんとかしてくれよ!頼むからな!!」
心配げな表情を浮かべ、善逸の姿をチラリと見た。
そんな村田さんに対し
「うるさい黙れ村田。味噌っかすの分際で。襲われないようにしっかり周りを見ていろ」
愈史郎さんは、さも鬱陶しいと言わんばかりの表情を浮かべ、2秒ほど村田さん睨みつけた。
すると
「おめえ!階級何なんだよ!!俺より下だったら許さねぇからな!!!」
村田さんが、愈史郎さんに向け怒鳴りつけた。