第16章 私が守るべきもの
私はベルトに刺してある日輪刀の柄に手を掛け
「……っ…殺してやる…」
獪岳に向け、飛びかかろうとした。
けれども
スッ
と、私の前に善逸の腕が現れ
「……約束…忘れた?」
それを止められてしまう。
「…っ…忘れてない…でも…」
言葉を続けようとした私だが
ギチギチギチ
と、強く握り締められた善逸の左手から聴こえてきた音に
「………わかった…」
柄に掛けていた両手をおろした。
善逸はそんな私の行動に"ありがとう"と小さく呟いた後
「じぃちゃんは耄碌してねえよ」
静かに呟いた。そしてその直後
「俺がカスならアンタはクズだ!壱ノ型しか使えない俺と、壱ノ型だけつかえないアンタ!後継に恵まれなかったじぃちゃんが気の毒でならねぇよ!」
まっすぐと獪岳を指差し、怒りを煽る様な口調でそう言った。
もちろん獪岳がその挑発に乗らないはずがなく
「テメェと俺を一緒にするんじゃねぇ!!!」
辺りに轟そうなほどの怒鳴り声を上げ、背負っていた日輪刀の柄に手を掛けた。
「…姉ちゃん…下がってて」
"嫌だ私も一緒に戦う''
そう言いたい気持ちをグッと堪え
「……うん…」
後方に跳躍し、善逸と獪岳から一気に距離を取った。
獪岳はそんな私の様子を目にすると
「お前、逃げんのかぁ?……まぁいい。お前はこのカスを殺した後、その腹にいる栄養たっぷりなガキごと食ってやるからな!」
そう言って舌なめずりをした。
「…っ…なんで…アンタがその事を…」
私は思わず、自分の下腹部を隠すように手で覆いながらそう尋ねてしまう。すると獪岳はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべ
「子を孕んだ女はなぁ…美味そうな匂いがプンプンすんだよ」
そう言った。その表情と発言に
「……っ…最低…」
吐き気がしそうなほどの嫌悪感を覚える。
獪岳はそんな私を鼻で笑うと
「お前、男が苦手だったんじゃねぇのか?あぁそうか!あいつの地位が目当てだろ?散々かまととぶって、ちゃっかりやることやって、赤ん坊まで作って……笑っちまうほど打算的な女だなぁ?」
汚いものでも見るような目で私のことを見て来た。