第16章 私が守るべきもの
獪岳は、そう言いながら獪岳睨みつけた私を
「…はっ……くだらねぇ」
馬鹿にするように鼻で笑ってきた。
そんな獪岳の様子に
「お前みたいな奴が姉ちゃんを馬鹿にするな。獪岳。鬼になったお前を、俺はもう兄弟子とは思わない」
善逸は、本当に善逸の口から発せられた声なのだろうかと疑問に思ってしまうほどの低い声でそう言った。
けれども獪岳には、そんな善逸の様子などへでもないようで
「変わってねぇなぁ。チビでみすぼらしい。軟弱なまんまでよ」
次々と、善逸を馬鹿にする言葉を、その口から吐いていく。
「…っ…あんた…そのうるさい口…今すぐ閉じなさいよ…」
「はぁ?俺様が今喋ってるんだぜ?黙るのはお前だろ?で、善逸。柱にはなれたのかよ?壱ノ型以外使えるようになったか?なぁおい善逸」
明るい口調で問いかけてくる獪岳は、どうあっても善逸を自分より下の人間と認識しているようで、善逸を馬鹿にするためだけに、その言葉を紡いでいるように見えた。
それでも善逸は挑発にのることなく
「適当な穴埋めで上弦の下っ端に入れたのが随分嬉しいようだな」
と、淡々と言い返した。
そんな善逸の様子に、獪岳は"へぇ…"と楽しげにつぶやくと
「…っはは!言うようになったじゃねぇかお前」
善逸を更に馬鹿にするように笑った。
……こいつ…一体どこまで最低な奴なの…
元々獪岳に対し、良い感情を抱いたことなどなかった。けれども、じぃちゃんを裏切った果てに死に追いやり、今も昔も善逸を下に見続けるその態度に、早速嫌悪以外の感情は抱かなくなっていた。
キッとその腹立たしい顔を睨みつけていると、善逸を見ていた獪岳の視線が私へと移って来た。
それからジッと私を観察するように見た後、スンと鼻を一度だけ鳴らした。それからニヤリと気味の悪い笑みを浮かべ
「……おいお前…もしかして」
何かを言おうとした。けれどもその言葉を
「何で鬼になんかなってんだ?」
善逸が遮り、私の方へと向けられていた獪岳の視線が、再び善逸の方へと戻って行く。