第16章 私が守るべきもの
そしてそのまま
スタン
と、鮮やかに着地した。
私は”…ふぅ”と息を吐き、ホッとしたような表情を浮かべている善逸に
「…っ平気だって言ったじゃん!なんで余計なことするの!?そんなに気を遣ってくれなくても大丈夫だから!!!」
横抱きにされた状態のまま、その焦げ茶色の瞳をキッと睨みつけ文句を述べる。
善逸はそんな私の様子に、両眉の端をいつも以上に下げ
「……ごめん…。でもさ、お願いだからそんな風に言わないでよ。俺、万が一姉ちゃんとその子に何かあったら……煉獄さんにも、じぃちゃんにも顔向け出来ないじゃん」
悲し気な笑みを浮かべそう言った。
そんな善逸の言葉と表情に
「……っ…ごめん……私…自分の事しか…考えられなくて……」
どうしようもない罪悪感が私の胸を覆いつくす。
それなのに
「そんなことないよ!だってほら、自分の左手、見てみなよ」
そう言う善逸は、先ほどとは違い、いつもの優しい笑みを浮かべていた。
「…左手?」
善逸の言葉に従い、善逸の顔に向けていた視線を、自分の左手の方へと向けてみると
「…っ…!」
私の左手は、まるでその中にある小さな命を守るかのように下腹部に添えられていた。
……私…いつの間にこんな…
驚き、目を見開きながら自分の手を見つめていると
「ね?自分の事しか考えてないなんてことないじゃん。姉ちゃん、無意識にそうしちゃう程、もうその子のこと、大切に思ってるんだよ」
善逸は、そう言いながら私の両足をゆっくりと床に着けるように降ろした。
私は左手が添えられた下腹部をしばらくじっと見つめ、ゆっくりと目を閉じる。
それから、自分の下腹部に全神経を向け
ドッドッドッドッ
………聴こえた…
自分のそれよりも、2倍ほどの速さで音を奏でる鼓動に耳を傾けた。
「………速い…」
善逸が、ぼそりとつぶやいた私の両肩を力強く掴んだ。