第16章 私が守るべきもの
……お館様…っ…どうして……上弦を倒してから…病の進行が遅くなったって…言っていたのに……祝言……楽しみにしてるって……言っていたのに……
「今は耀哉様に変わって輝利哉様が指揮を取ってくれてるの!」
「……っ…!」
涙とともに怒りがこみ上げ、ギリッと歯を食いしばる。
「床が見えてきたの!」
和の言葉に床へと視線を向けると、確かに床らしきものが視界に映りこんだ。
「着地に備えるの!」
……響の呼吸で落下の勢いを殺せば…この程度なんの問題もない…
私は、自分と床との距離をよく観察し、その時が来るのを見計らう。
……よし…もう少し…
スゥっと呼吸を深めようとしたその時
「…っ…ちょ…善逸!?何してるの!?」
私に縋りつくようにしていた善逸の身体が離れたと思った直後、善逸は落下しながらも、私の身体をサッと横抱きにした。
「…っ…そんな必要ないから!離して!」
私の身体をがっちりと抱き込む善逸の胸辺りを掴み、離すように訴えかけるも
「は?何言ってるわけ?このまま着地なんてしたら、身体に相当負担かかるでしょ?そんなの駄目に決まってるじゃん」
善逸が、先ほどまでのうるさい様子は何だったのだろう…と、聞きたくなるような冷静な口調で言ってきた。
「…っ…響の呼吸で落下の勢いを殺せば平気だから!こんな事してもらう必要ない!着地くらい自分で出来る!」
「じゃあ勢いは殺して。それでこのまま着地すれば、なんの問題もないでしょ?」
「問題あるから!やめ「ほら!もうそろそろだよ!」……もう!……………響の呼吸肆ノ型…っ空振波浄!」
音の波が私と善逸を包むように広がり、重力に引っ張られ勢いよく落下していた私と善逸の身体は、フワリと浮くようにしながら落下速度を落としていく。
床まで残り20メートルほどまで近づいてくると
「姉ちゃん。後はもういいよ」
善逸は早口気味にそう言い
「え…な「雷の呼吸壱ノ型…霹靂一閃…六連!」」
私を横抱きにしたまま
トントントントントントン
と、壁を蹴り、下へと降りて行く。