第16章 私が守るべきもの
けれども、その口調にいつもの和やかさは感じられず、明らかにしょんぼりとしていた。肩に止まった和は、だだただ黒々とした丸い瞳を私に向けてくるだけで、最初に名前を呼んでくれて以降は、その嘴を開く気配はみられない。
そんな様子から、和がじぃちゃんの身に起こったことを、既に知っていることがうかがい知れる。
「……大丈夫?」
私の頭頂部と同じくらいの位置にある、まぁるく小さな頭を中指の腹で撫でてあげると
「…和は大丈夫…なのぉ…でも…鈴音は…だいじょばないのぉ…」
ポロポロと、鴉が流すそれとは思えないほどの涙を流し始めた。
「……もう…だいじょばないって…なによ…」
結局私も、和につられるように泣いてしまった。
それでも、こうして自分と同じように、涙をこぼし悲しんでくれる相手がいるということが、じぃちゃんとの別れをきちんと受け止める手助けをしてくれているような気さえした。
そうしてしばらく歩いていると
「……あれ?」
前方から、木の下で待ち合わせているはずの善逸が、駆け足でやって来た。私もそちらに向かって駆け出そうとした時にはもう既に遅く
「一人で泣くの無しだから。泣くなら、俺がいるときにして」
善逸は、一瞬で私の前に現れると、私の顔をその肩に埋めるように無遠慮に抱きしめて来た(和は、善逸のあまりの勢いに驚いたのか慌てて飛んで行ってしまった)。
「……一人じゃないよ?和が…一緒に泣いてくれたから……でも…ありがと、善逸」
私は善逸の突然の登場に驚きはしたが、それ以上に、私が泣いてる音を聴きつけ、急いでここまで来てくれたという事実が嬉しかった。そして
……絶対…泣きついてくると思ってたんだけどな…
善逸がちっとも泣いていないことが気がかりだった。私は、空いている両の手を善逸の背中に回し
「…善逸こそ…平気?」
そう尋ねた。すると、善逸の肩が僅か揺れた。
「………平気」
「ねぇ…私の前で無理なんかしないでよ…泣きたかったら…一緒に泣こうよ……ね?」
左手は善逸の背中に触れたまま、右手で優しくその背中をポンポンと叩く。