第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
震えそうになる手をグッと抑えながら手に持っていた箱を元の場所に戻し、急がなくてはならないと理解しながらも
……きっと…よくない話だ…でも…一体どんな…?
自然と足取りは重くなる。
私は、重い足を引き摺るようにしながら部屋の真ん中辺りで目を閉じ正座をしている杏寿郎さんの前まで行くと、杏寿郎さんに倣うように正座で腰掛けた。
私が座った事を確認した杏寿郎さんは、ゆっくりと隻眼を開き
「これからする話は、鈴音にとってとても辛い話だ。心して聞いてほしい」
私の目をじっと見据え、そう言った。
"聞くのが怖い"
そう思った。けれども
「……はい…」
話を聞かずに済むとは到底思えず、私は杏寿郎さんの目を恐る恐る見返した。私の返事を聞いた杏寿郎さんは
「……」
一呼吸置いた後
「鈴音の育手である桑島殿が…亡くなったそうだ」
そう言った。
「………え?…今……なんて……?」
聴こえなかったわけじゃない。
その証拠に、私の身体はサーッと冷たくなって行くし、声は情けないほどに震えていた。
杏寿郎さんは、そんな私から少したりとも目を逸らす事なく
「…桑島殿が亡くなったと…昨日、我妻少年から俺宛に連絡がきた」
先ほど告げされた言葉よりも更に衝撃的な言葉を発した。
あまりの衝撃的過ぎるその言葉に、私の喉が
ヒュッ
と音を立てた。目眩を起こしそうになるのをグッと堪え
「…っ…どうして…じぃちゃんは…死んだんですか…っ…なんで…善逸から…私じゃなくて…杏寿郎さんに…連絡が…?そもそも…なんで…私に…直接…来ないん…ですか…?」
私は、浮かんできた疑問を次々と杏寿郎さんにぶつけていく。
杏寿郎さんは、私のその問いに一瞬視線を下げたが、再び私の目をじっと見据え
「桑島殿は……腹を切って自ら死を選んだ。理由は、自分が育てた雷の呼吸の使い手が鬼となってしまった責任を取るため。鈴音に直接ではなく、我妻少年から俺を介して君に連絡が行くようにと配慮してくださったのは、桑島殿ご本人の気遣いだそうだ」
淡々と、事実だけを述べるように言った。