第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
その言葉に私の心臓が
ドキッ
と嫌な音を立てる。
「…っしのぶさん…やっぱり病気か何かなんですか!?」
ガタッと音を立て椅子から立ち上がり、足をもつれさせながら愈史郎さんの元へと駆け寄った。
その勢いのまま愈史郎さんとの距離を縮め
「愈史郎さん!」
気がつくと、失礼だとかそんなことも忘れ、詰め寄っていた。
すると愈史郎さんは
「不細工な顔を近づけて来るな!この醜女!」
鬼特有の牙を剥き出し、眉間の皺をこれでもかと言うほど深くしながらそう言った。
あまりにも強烈なその言葉に
……いや…確かに…大した顔はしてないけど……醜女は流石に言い過ぎじゃ……いやいや!そんなこと考えてる場合じゃない!今はしのぶさんの身体の事を聞かないと…!
図らずも、冷静な思考を取り戻すことが出来た。
私は愈史郎さんを掴んでいた手を離し
「…失礼な事をしてしまってすみません」
そう言いながら一歩後ろに下がり、愈史郎さんの顔を改めてきちんと見る。
「しのぶさんの身体に、何か問題があるんですか?もしそうなら、私に何かしてあげられる事がないか…どうか教えてください」
真っ直ぐと、愈史郎さんの瞳をじっと見据えそう尋ねると
「………」
愈史郎さんは、しばらく沈黙した後、その身体を隣の部屋の方へと向けた。それから再び、顔だけ僅かに私の方へと向けると
「あの女。おそらく藤の花の毒を多量に摂取している」
静かにそう言った。
その言葉に
「……藤の花の……毒…?」
私は、自分の耳を疑った。
藤の花は、私たち鬼殺隊にとってとても重要な存在であり、戦いにおいて強い味方にもなり得るものだ。けれども、人間に対しても毒性があり、その香りで身を守ることはあっても、自ら好き好んで毒を摂取しようという者などいない。
「どうやっているかは知らないが、毒の摂取後一定時間過ぎれば藤の花の匂いが消えるよう作っているんだろう。普通にしていれば、その匂いに気づくことはないが、あいつはここで、朝からは晩まで薬を作っていることも多い。毒を摂取してから匂いが消えるまで、時間が経つのを待つのも惜しいんだろう。俺や珠世様でなければ、この場を去っている」
愈史郎さんの口から紡がれた事の内容に、少しだけ思い当たる節があった。