第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
薬の完成も近づき、こうしてしのぶさんと珠世さん、それから愈史郎さんと共に過ごすようになりしばらく経ったが、その間に、気がかりな事が出来た。
……しのぶさん…今日はいつもより顔色がよくない気がする…それに……息遣いも違う
常中が途切れるようなことはないものの、いつものそれとはかなり違って聴こえていた。
…なにか…病気でも患ってるんじゃないの…?
夜蝶屋敷で過ごす際、それとなくすみちゃんなほちゃんきよちゃん、それからアオイさんと栗花落さんに、しのぶさんの様子でおかしなところはないか、気になることはないか、尋ねてみた。けれどもみんな
"特にそんな様子はありませんけど?"
不思議そうな顔をしながら返事をしてくるだけだった。
その表情や声色に、嘘をついている様子は全く見受けられず
"そっか!変なこと聞いてごめんね"
と、答える他なかった。
やっぱり…絶対におかしい…
そんな事を考えていたその時
ガチャっ
と、ドアの音を立て、足りない材料を調達に出ていた愈史郎さんが戻ってきた。
愈史郎さんは、部屋に足を踏み入れるや否や、とてつもなく嫌そうに顔を顰めた。あまりのその歪め具合に
「…どうかしたんですか?」
そう尋ねると
「………」
愈史郎さんは、壁一枚隔てた隣の部屋、しのぶさんと珠世さんがいる部屋の方をじっと見た。そしてその後、私の方へと視線を寄越してきた。そして
「お前、あの女と親しいんだろ?」
そんな事を尋ねてきた。まさかそんな事を聞かれるとは思っておらず
「……しのぶさんと…ですか?…どちらかと言えば…親しいと言えるような気もしますけど…どうしてそんな事を聞くんですか?」
少し遅れてそう返事をした。すると愈史郎さんは
「親しいと言う割に、あの女があんな状態になるまで放っておくとは、随分と冷たいやつだ」
まるで汚いものでもみるような視線を私に寄越しながらそう言った。