第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「で、お前や炭治郎達の扱いなんだがよ」
天元さんのそんな言葉に、私は一旦水柱様のことを考えるのはやめ、”今後の私の扱い”とやらに意識を向ける。
「お前等は、ここのところずっと俺らと稽古して来ただろ?だからぶっちゃけ改めて柱稽古に参加する必要はそうねぇ。だが、お前らだけ特別扱いすれば不満に思う人間も必ず出てくる」
「……それは…そうですよね」
鬼殺隊は基本的に実力主義だ。けれども中には、年齢、性別等、戦いとは関係のない部分で仲間をはかろうとする人間もいる。隊士皆の気持ちをひとつにし、戦いの重要な局面を迎える必要がある中で、そんなことに気を揉んでいる暇は少したりともない。
「んなくだらねぇこと考える奴は隊に必要ねぇ!…と、言いたいところだが、現状戦える人間は1人でも多い方がいい。だから炭治郎、我妻、嘴平達には稽古に参加はしてもらって、周りの士気をあげてもらう」
天元さんのその言葉に
……炭治郎君はともかく…善逸と伊之助君にその役割が務まるのかな…まぁでも、善逸みたいにぎゃーぎゃー文句言いながらもやる姿と、悪気なく周りを煽り倒す伊之助君は…それはそれで士気をあげる役割を果たすのか…
と、大変失礼ながらそんなことを考えてしまった。
「3人のことはわかりました。…それで、私はどうすればいいんですか?」
今の天元さんの話に、私の名前は出てこなかった。すなわち私には、柱稽古に参加する以外に、なにか他の役割が与えられるということだ。
「お前は稽古には参加しなくていい。その代わり、胡蝶を手伝え」
天元さんのその言葉に
「…しのぶさんの手伝い…ですか?」
私は思わず首を傾げてしまう。天元さんはそんな私の反応に
「んな顔で俺を見んな。俺だって、どうしてお館様が、わざわざお前に胡蝶を手伝わせろとご命令されたか知らねぇし、そもそも胡蝶が何を命じられてるかもよく知らされてねぇんだよ」
さも面倒くさいと言わんばかりに顔をしかめそう言った。
「……お館様の…ご命令…」
なんとも聞き覚えのある言葉だと思った。けれども、同時に
”きっと何かしらの意味があるんだ”
とも思った。