第3章 未知との出会い、騒音との再会
そんなしっぽりとした雰囲気だったのに
「とにかく、天元様との行為はものすごく気持ちが良くって、愛されてるなってことを体の芯まで感じられるんです!」
なぜか私は、須磨さんと天元さんの夜の行為のあれやこれやを聞かされていた。
確かに…確かに心のことも体のことも教えて欲しいって言ったのは私だけど…そこまで赤裸々に教えてくれなくても…良いのに
そんな須磨さんの話聞きながら、ふと思い出してしまったのは、まだここへ来てから間もない日の出来事。
私は天元さんに約束させられて事があった。
その内容とは
”俺が嫁の誰か一人と俺の部屋に行ったときは、絶対にその聴く耳を使うな”
というものだ。
それを言いつけられたとき、馬鹿な私は
どうしてそんなことを約束させられるんだろう
と理解が出来ずにいた。けれども、
まぁ天元さんがそういうのであれば何か大事な理由でもあるんだろうな
そんな風に思いそこまで気にしていなかった。
そしてそれから数日後。
まだ陽が昇りきる前に目が覚めた私は、
折角だし裏の山でも走って来よう
そう思い、服を着替え、顔を洗おうと母屋の側にある井戸へと向かった。
ことはそこへ向かう途中に起こった。
…猫の…鳴き声かな?
なにやら猫が甘えるときに出すような高い声がどこからか聞こえた気がした。野良猫と戯れるのが好きな私としては、その猫ちゃんがどんな子なのか気になってしまい、どこにいるのか捜そうと思ってしまった。
耳に意識を集中し、辺りの音を聴いてみると
”…あぁっ…天元様ぁ…”
「…っ!?!?」
聴こえてきたのは猫の鳴き声なんかではなく
”…きもちいいか…まきを…?”
まきをさんの、あられもない声だった。
…っ私の馬鹿!ちょっと考えればわかるじゃない!
自分のあまりの鈍さに対する腹立たしさと、聴こえてしまった官能的な行為の声と音に、私は頭がどうにかなってしまいそうだった。けれどもその一方で、その行為を聴くのをやめることが出来ずにいた。
私は別に盗み聞きをする趣味があるわけではないし、今すぐに聴くのをやめなくてはと思ってはいた。それでもすぐにやめることが出来なかったのは、天元さんとまきをさんの2人のその行為が、私が知っているものと、あまりにも違っていたからだ。