第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
寂しくないと言えばそうじゃない。
それでも、長きに渡り続いたこの戦いの終わりが見え始め、何としても勝利を掴むために。そして1人でも多くの隊士が生き残り、鬼のいない未来を生きられるようになるために、そんな感情は二の次だった。
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「そろそろ戻って来る予定の時間ですね!」
「…そうですね」
今日も今日とて、雛鶴さんまきをさん須磨さんそして私の4人は、ひたすら秘薬を調合していた。
訓練用の秘薬は、一部の隠の方たちにも調合してもらえるようにはなったものの、本番用…つまりは正規の量のそれは、相変わらず私達4人で調合していた。
はっきり言ってそこまで作業が楽になっていないのが現実だ。
「ちょっと須磨!あんた時計ばっかり見てないで手を動かしなさいよ!」
「動かしてますよぉ!でもでも、今日の会議で色々決まるわけじゃないですかぁ!?私、気になって気になって調合どころではありません!」
「はぁぁあ!?あたしだって気になる気持ちを堪えてやってんのよ!あんただけだと思わないでくれる!?」
「っ痛ぁい!わぁぁん!まきをさんがぶったぁぁあ!」
今日も今日とて喧嘩を始めた二人の様子を
……いつもいつも飽きない2人だなぁ
なんてことを思いながら眺めていると(私が仲裁に入っても止まる2人ではないことを学んだので無駄なことはしない)、ふっと雛鶴さんが私の事をジッと見ていることに気が付いた。
猫のように形のいい紫色の瞳にジッと見つめられ、なんだかドキドキしてしまう。
「………」
雛鶴さんは、私が見られていることに気が付いたことを、間違いなく気が付いているはずなのに、その視線を外そうとはせず、私の顔をじーっと観察するように見続けている(いつもまきをさんと須磨さんの喧嘩を止めに入る雛鶴さんがこんな調子の為、2人も依然として言い争いを続けている)。
「……どうかしましたか?」
首を傾げ、私がそう尋ねると、雛鶴さんはハッと我に返ったような反応を見せ
「…っじろじろ見てしまってごめんなさいね。……でも…」
雛鶴さんは私に謝罪を述べた後、先程と同じように私の顔をジッと見て来た。