第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
…何かしていないと落ち着かない…秘薬の調合の続きでもして来よう
そう思った私は天元さんを追いかけるのを止め
「それじゃ私、離れで調合の続きをしています。今後どうするか決まったら和づてで構わないので連絡を下さい」
そう言いながら踵を返し、玄関を出ようとした。けれども
「待て」
「…グエっ」
天元さんの大きな手が私の襟首を引っ掴み、急に引っ張られた苦しさで口から変な声が漏れてしまった。
私は首だけぐるりと振り返り、斜め上にある天元さんの顔を睨みつける。
「…っもう!急に何するんです!?苦しいじゃないですか!」
そう言いながら私の襟首を掴んでいる天元さんの太い手首を掴み、それを振り払った。天元さんは、急に掴まれたことに腹を立てている私の様子など、全く気にしていない様子で
「お前、ちゃんと休んでんのか?いつも大したことねぇ顔が更に酷いことになってるぜ?」
まるでばっちぃものでも見つけたと言いたげな、なんとも言えない顔をしながらそう言ってきた。
そんな風に言われればもちろん
「…っ大したことなくて悪かったですね!美人で綺麗で可愛い天元さんの奥様達に比べれば、誰だって劣って見えます!それに、誰のせいで疲れていると思ってるんです!?そんな風に言うなら、秘薬の調合する人数増やしてください!」
言い返してしまうのも致し方ない。
天元さんは、先程私の襟首を掴んでいた手を顎に持っていき、何かを考えるようなそぶりを見せた後
「確かに、状況から考えて秘薬の数を少しでも増やしておく必要があるかもしれねぇな……手先の器用な隠でも募って手伝わせるか」
と、神妙な顔をしながら言った。
だったらもっと早くそうして欲しかったんですけど
心の中で思っていたそんな言葉は、しっかりと私の表情に出てしまっていたようで
「てめぇ…師範をそんな目で見るとはいい度胸だな」
天元さんは、私をじっと見下ろしながらそう言った。けれどもその後すぐ、表情をいつものそれに戻し
「まぁいい。とにかく、今日はもう自分の家に帰って休め。上官命令だ」
私の眉間を人差し指でビシッと指差しそう言った。