第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
だからきっと、風柱様があぁして弟さんを頑なに拒絶のにはする理由があるはず。もちろん関係のない私と言う人間がそこに首を突っ込もうとは思わないが
もったいない人だな
と、感じずにはいられなかった。
「上弦2体を倒したこと、秘薬が有効活用できたこと、どっちもすげぇ事だ。…だがな」
天元さんは一度言葉を切り、草履を脱ぐ仕草を一旦辞めると、後ろにいた私の方にクルリと振り返った。そんな意味ありげな言葉と行動に
「…だが…なんなんです?」
私は、天元さんの茶色がかった赤い瞳をじっと見ながらそう尋ねた。
「それ以上にとんでもねぇことが起きた」
もったいつけるようにそう言った天元さんに
「…っ何があったんですか!?早く教えてください!」
私は駆け寄り、先程よりも更にじっとその目を見つめた。天元さんはそんな私の目をじっと上から見下ろすと
「竈門禰󠄀豆子が太陽を克服した」
先程までの騒がしさが嘘のように、静かな声色で言った。
「……禰󠄀豆子ちゃんが…太陽を…克服…した…?」
天元さんの口から出て来たあまりの衝撃的な言葉に、私はただ意味もなくその言葉を反芻することしか出来ない。
「あぁ。その件に関して、これから集まれる奴らだけで緊急の柱合会議をすることになった。だから今日の秘薬の稽古は中止だ」
「……そうですか」
鬼である禰󠄀豆子ちゃんが太陽を克服した。それはつまり、万が一、禰󠄀豆子ちゃんが鬼舞辻に取り込まれてしまうようなことがあれば、鬼舞辻が太陽を克服してしまうことに繋がるということである。
秘薬の稽古も、秘薬の調合も進み、希望が現実味を帯びて来た今、そんな事態が起こることは絶対にあってはならない。
……これから…どうなっていくんだろう
誰も想像していなかった今回の禰󠄀豆子ちゃんの太陽の克服で現状がどう変化していくのか。考えれば考えるほど、どうしようもない不安がこみ上げてきた。