第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
そんな日々に
「炭治郎たちが上弦を2体倒した!」
大きな変化が訪れた。
この日も私は、杏寿郎さんの邸ではなく音柱邸で朝を迎えていた。
雛鶴さんまきをさん須磨さんと4人で朝食を取り、身支度を整えた私は秘薬の稽古に向かおうと音柱邸の門を潜った。そこに丁度、珍しく慌てた様子の天元さんが現れ、その口から発せられたのが、"炭治郎たちが上弦を2体倒した"という信じがたい言葉だった。
「…っ嘘…!」
私は驚きのあまり、右手で口を覆い、目をこれでもかと言うほどに見開いた。
「嘘なわけあるか!刀鍛冶の里にいた炭治郎、甘露寺、時透、それから不死川の弟の4人でだ!っとにあいつ、どんだけ引きがいいんだよ!?派手に羨ましいぜ!」
昨晩は見回りがあり、夜通し駆け回り疲れているはずの天元さんだが、酷く興奮した様子で、疲れた様子など微塵も見られない。
「…っ…3人とも秘薬を使ったんですか?」
ずんずんと玄関へと向かっていく天元さんの背中を追いかけながらそう尋ねると
「4人だ!」
天元さんは、私の方を振り返ることなく
バァン
と、乱暴に玄関を開けながらそう答えた。
その音に、一瞬顔をしかめてしまった私だが、全く止まる様子のない天元さんに置いて行かれないよう早足でその背中に付いていく。
「4人?でも風柱様の弟さんは…秘薬の稽古に参加してなかったですよね?」
岩柱様が自分のところにいる隊士…つまり風柱様の弟さんも稽古に参加させたいとおっしゃったらしいが、風柱様は断固としてそれを認めず
”そんな野郎俺とは関係ねェ…だが、そいつを参加させるってんなら俺はやらねェ”
と、冷たい表情で言っていたことは記憶に新しい。
「不死川の弟は、悲鳴嶼さんが個人的に訓練してくれてたみてぇでな。きちんと使いこなしてたって話だ」
「……そうですか」
稽古を経てわかったことだが、風柱様はその見た目や言動に反し、とても優しい方である。