第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
"嫁達と決めた事"
そう言われてしまえば、私が口を出すことなどできるはずもなく
「……っ…わかりました」
天元さんの言葉を飲み込むしかなかった。
私の返事を聞いた天元さんは、私の顔を3秒ほどじっと見た後、私から離れ元々いた場所に戻って行った。
「よし!それじゃあ今から、訓練の計画を立てる。全員こっちに来てくれ」
天元さんの呼びかけに、縁側に座っていた柱達は次々に立ち上がり、天元さんの方へと近づいていく。
私は、恋柱様に預けさせてもらっていた身体を起こし
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
ギシギシと痛みを訴えてくる身体の痛みに耐えながら頭を下げた。
「いいのよ!私が好きでやった事だから謝らないで!」
そんな私の行動に、恋柱様はバタバタと手を動かし、たいそう慌てた様子でそんな風に言ってくれる。あまりにも優しく、そして可愛らしい恋柱様の様子に
……恋柱様…柱なのに、なんて謙虚で可愛い人なんだろう。こんな素敵な人が弟子としてそばにいて…杏寿郎さん…よく好きにならなかったな
私は思わず、感心にも似た感情を抱いてしまう。
「そんなことより!」
恋柱様はそう言いながら顔を傾け、私のそれを覗き込んでくる。そして
「まだ立つのは大変でしょう?よかったら私がおんぶしてあげるわ!」
にこっと、満面の笑みを浮かべながらそんな事を言ってくれた。
"上官である柱の手をそこまで煩わせるわけには行きません"
そう言って断るべきであることは十分に理解している。理解しているつもりなのだが、私の口は自然と
"お願いします"
と口走ろうとしていた。
けれども
「2度も甘露寺の手を煩わせるわけにはいかない!鈴音はこっちだ!」
「…っあ!ちょ…っ…杏寿郎さん!」
杏寿郎さんはサッと私の両脇に手を差し入れ腕力だけで私を持ち上げると、まるで幼児がそうされるように、左腕の関節あたりに私の尻を置いた。
その姿勢は、力の入らない私にはいささか不安定で
……っ落ちちゃう…!
思わず、目の前にあった杏寿郎さんの頭にしがみついてしまった。