第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
そんな杏寿郎さんの様子に
……杏寿郎さん…やっぱり…今でも戦いたいって…そう思ってるんだ…
改めて杏寿郎さんが隠していた悔しさのようなものを垣間見た気がした。
天元さんは杏寿郎さんから注がれる物凄い視線をものともせず
「お前。内臓駄目にしてんだろ?普通の状態なら問題ねェが、そんな状態の奴に秘薬を飲ませるわけにはいかねぇ」
杏寿郎さんに負けず劣らず強いそれを返していた。
そうしてしばらく睨み合って二人だが
「杏寿郎」
「……はい」
その睨み合いに終止符を打ったのは、今まで柱達の話し合いを静観していたお館様だった。
「杏寿郎が今でも戦いたいと思っていることを、私も、そして他の子たちも理解しているよ」
「……」
杏寿郎さんは、お館様の言葉に何も言わなかった。
”何も言わない”
そんな行動から、杏寿郎さんの気持ちが痛いほどに伝わってくる。
「私はね、私の代で必ず鬼舞辻を打ち滅ぼしたい。でもね、それと同じくらい、私は、私の子どもたち全員に生きてもらいたいと…そう思っているんだ」
お館様の言葉に、誰も言葉を発さなかった。
「私の子どもたちみんな、”明日死ぬかもしれない”という覚悟を持って戦っていることも理解している。たくさんの子どもたちが、そうやって命を落としてきたことも事実だね。でも私は、今までもこれからも、誰一人として死んでほしくはないと…そう思うことをやめられないんだ」
お館様の言葉が、私の耳を、そして心を、大きく揺さぶって来る。
「天元と鈴音が秘薬の調合方を手に入れて来てくれたお陰で、鬼舞辻と対等に戦う糸口を掴むことが出来た。でももしそれがなかったら、私は…私たちは、君たちの大切な未来を奪って戦うしかなかったんだ」
「…お館様。"未来を奪う"とは…一体どういうことなのでしょうか?」
しのぶさんのその問いに
「あまね」
「はい」
お館様は、お館様の後方に立つ奥方様に声を掛けた。