第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
けれども
「…わかった」
蛇柱様がぼそりと呟いた言葉に、皆の視線が蛇柱様の方へと移る。
「秘薬を飲むことに関して、俺はもう反対しようなどとは思わない。だが俺たち柱には任務に加え見回りがある。反動で動けなくなっている時間などありはしないだろう」
そんな蛇柱様の言葉に反応したのは
「動けない人の分は、動ける人が代わりを務めればいいだけです」
しのぶさんだった。
「事前に秘薬を飲んだ状態で稽古をする順番を決めておく。柱がいけない分を、階級が上の隊員2.3人で補う。方法は考えればいくらでもありますので、さほど問題はないでしょう」
”しのぶさんが秘薬を飲んだ状態での稽古をするための意見を出してくれた”
それは即ち、秘薬を使うことに同意を示してくれたことと同じだ。蛇柱様も、しのぶさんの提案に特に反対意見はなかったようで何の文句も言わなかった。
「よし。これで意見は纏まった」
天元さんのその言葉に、私はなんとか姿勢を正す。
「今後俺たち柱…後はその継子もだな。秘薬を飲んだ状態で合同稽古をする。その稽古の中で、各々秘薬の効果継続時間がどれだけあるかを正確に把握する。ゆくゆくは、一般隊士にも普及出来るよう稽古の規模を大きくし、隊全体の戦力上昇に繋げる。…以上が今後の計画だ」
天元さんのその言葉に、皆同意を示す反応を見せた…ように見えたのだが。
「聞いてもいいだろうか」
普段よりも落ち着いた杏寿郎さんの声が縁側に響いた。
「……なんだ?」
天元さんは、杏寿郎さんが何か言ってくることを想定していたのか、落ち着いた反応を見せる。
「その秘薬、俺が飲んでも問題はないだろうか?」
杏寿郎さんの、静かな、けれども確かな意思を孕んだその問いに
「……駄目だ」
天元さんは、杏寿郎さんの目をジッと睨むように見ながら言った。そんな天元さんの答えに、杏寿郎さんの纏う雰囲気がピリリと張り詰め
「駄目という理由はなんだ」
天元さんを睨み返すようにジッと見据えた。