第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「こいつの出番はもう終わりだ。好きにしろ」
天元さんはそう言うや否や
「…っひゃあ!?」
”ペイッ”
と効果音が付きそうな程適当に、私の身体を放り投げた(その直後、杏寿郎さんが”宇髄!”と怒り声で天元さんの名を呼んでいたがそんなことを気にしている余裕はない)。
ボスっ
荷物のように宙を舞った私をがっしり受け止めてくれたのは
「大丈夫?荒山さん?」
私を支えてくれると申し出てくれた恋柱様で
「……はい」
私はその可愛さと、私を軽々と横抱きにしてくれる力強さに
キュンッ
と、思わず心をときめかせてしまった。すると
「甘露寺の手を煩わせる訳にはいくまい。鈴音、こちらに来るといい」
ぎこちない笑顔を浮かべた杏寿郎さんが、立ち上がった甘露寺様に横抱きにされている私の方へとスッと腕を伸ばしてきた。そんな杏寿郎さんの行動に
「私、全然大丈夫なので!気にしないで下さい!」
恋柱様は、三つ編みを振り回し、首をブンブンと勢いよく左右に振りそう答えた。けれどもその直後、はっと何かに気が付いたような表情を浮かべる。
私はそんな恋柱様の様子に、どうかしたのだろうかと思いながら綺麗な若草色の瞳を見つめる。
「…よく考えたら、荒山さん、私よりも煉獄さんの方が落ち着くわよ「全然!恋柱様がいいです」…そう?それじゃあどうぞ!」
恋柱様は、私を杏寿郎さんに委ねるべきだと思い至ったようだが、全力で否定させてもらった。恋柱様は、頼りにしてもらえることが嬉しいのか、ニコニコと微笑みながらゆっくりと私のお尻を地面へと降ろし、その後草履まで脱がせてくれた。それから
「はいどうぞ」
自分の肩をポンポンと叩き、身を預けるよう促してくれる。
杏寿郎さん、それから蛇柱様の方から物凄い視線を感じるような気もするが
「……ありがとうございます」
それらを完全に無視し、私はいそいそとその肩に身を預けさせてもらった。
「……話、続けるぜ?」
床へと向けていた視線を天元さんの方へ向けると、明らかに呆れたような表情を浮かべており、僅かな羞恥心を覚えた。