第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め

伍ノ型で作り出した音の波は、私へと真っすぐ飛んでくる斬撃をはじき返す。そして


「…っ！？」


風柱様が作り出した斬撃の勢いをそのまま奪い、私に向かって来た時の勢いよりも更に勢力を増し、それを作り出した主の方へと戻って行った。

すると風柱様は、私のはじき返した斬撃を避けるのではなく


「風の呼吸参ノ型、精嵐風樹！」

「…え…？」


自身の周りに無数に作り出した竜巻のようなもので切り刻んだ。


……なにあれ…凄い…！


寄り添うように風柱様の周りにいくつも現れた竜巻に、私は目を奪われてしまった。そして


……私の…空振波浄の使い方と…似てる


雷の呼吸、そして音の呼吸でも見たことがなかった身を守るために放たれた型に、私は強く心惹かれた。

けれども悠長に考えている暇などある筈もなく


「なにぼーっとしてやがんだァ…次いくぜェ！」


風柱様は高く跳躍し


「風ノ呼吸漆ノ型、勁風・天狗風！！！」


木刀を振り下ろしながら私目掛け真っすぐと向かって来る。受け止める、もしくは避けなければと思いその動作を取ろうとした私だが


……あれ…上手く動かない…っ…秘薬の効果が切れたんだ…！


そう気が付いた時にはもう手遅れで、縦回転をしながら木刀を振り下ろす風柱様の姿がもうすぐそこまで来ていた。風柱様は攻撃を受け止めようとも避けようともしない私の様子に気が付いたのか


「…呆けてんじゃねェ！避けろ！！！」


慌てた表情をし、怒鳴り声をあげた。そんな姿を見ている一瞬の間にも、私の身体からはどんどん力が抜けていき


……そうしたくても…出来ないんです


心の中でそう呟き、攻撃の当たり所が悪くないことを祈るしかなかった。

風柱様の木刀は、風柱様がギリギリで身体をひねってくれたおかげで脳天に直撃することはなかったが


……また左肩かぁ…今度こそ折れる


先の稽古で最後に打ち込まれた場所へと向かって行った。


…全治1ヶ月くらいだといいな


現実逃避をするようにそんなことを考えていたその時

グンッ

腹部に巻き付いた太い腕が、私の身体を掻っ攫った。