第3章 未知との出会い、騒音との再会
その問いに対する3人の反応が気になり、チラリと視線を上げると3人はお互いに顔を見合わせていた。
それから3人一緒に視線を私によこし
「それは、体と心、どっちの話かしら?」
雛鶴さんが穏やかな微笑みを浮かべながら私にそう聞いてきた。
「…両方…です」
私はこの音柱邸に来るまで、一度たりとも男の人に愛されたいと思ったこともなければ、愛したいと思ったこともなかった。父と母、そして継母のあんな愛憎劇を見せられて、そう思わないことの方が難し話だ。
けれどもこの音柱邸へ来て、天元さん、雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんの姿を日々見ていると、
”自分もいつかそんな風になれたら”
と、微かにだが思うようになった。
「…聞いているとは思いますが、私は体格のいい男性が苦手です。母を自殺まで追いやった父の姿と、どうしても重なってしまうから…」
最近は、そんな自分を変えたいと思えるようになった。
それは、少し前の任務であった苗場さんとの出来事のお陰でもあるが、何よりも天元さん、雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんの影響が大きかった。
「雛鶴さんに、まきをさんに、須磨さんは…天元さんのどんなところが好きなんですか?」
私は、3人の天元さんを見つめる瞳から零れ落ちんばかりに感じる愛情が、どんな物から生まれてくるのかを知りたかった。
「…改めてどこがって聞かれると…そんなのありすぎてわかんないねぇ…」
顎に手をあて、首をかしげながらそう答えるまきをさん。
「全部ですよ!全部!天元様の全部が好きに決まってるじゃないですか!」
両頬にに手を当て、赤く染めながら答える須磨さん。
「…そう言いたくなる気持ちは…わかるんですけど…」
私が”普通”に男性を愛せて、”普通に”愛してもらえるような人間だったら…簡単にわかるのかな
そんなことを考えていると、なんだか自分がとても寂しい人間に思えてならなかった。依然として座卓に鎮座している媚薬を見ながらふぅ…と小さくため息をひとつ吐く。