第3章 未知との出会い、騒音との再会
左の手のひらに転がっているその錠剤を、右手の親指と人差し指で摘み、じーっと眺める。
「これは、どんな効果のある薬なんですか?」
何の気なしに私がそう尋ねと、
「それはですねぇ、興奮作用のある薬…すなわち媚薬です!」
「…びやく……?…媚薬ぅ!?」
「はい!媚薬です!」
須磨さんは、さも当然のことのようにそう答えた。
自分の手に持っている得体の知れない薬の正体が”媚薬”ということを理解した私は、思わずそれを座卓に慌てて置く。
「しかもですねぇ…天元様お手製のこの媚薬は、男女両方に効くという優れものなんです」
…そんな事、知りたくないんですけどぉ!
心の中でそう叫びながら、座卓にちょこんと鎮座している媚薬をじーっと見ていると、
「ほら。鈴音が困っているでしょう?確かにまったく必要性がないかどうかって聞かれるとそうとも言えないけど、今の鈴音には必要ないものよ」
「そうだよ。あんた本当にバカなんだから。もっと考えてものを言いなさいよ!」
「あぁあ!まきをさんが私のことバカって言ったぁ!天元様ー!聞きましたかぁ!?」
「残念だったね!天元様は今外出中だよ!」
そう言って言い争いを始める2人を
「ちょっと、喧嘩しないでちょうだい」
雛鶴さんがなんとか宥めようとしている。この3人の光景は、早速私にとって定番となりつつあり、
あぁ、またやってる
と思いながら、ただただその様子を見守っていた。
そんな様子を見ていて、ふと蘇ってきた修行の際に見た、天元さんを見つめる雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんの姿。
「…あの…失礼を承知で…3人に…聞いてもいいですか?」
私のその言葉に、言い争っていたまきをさんと須磨さん、そしてそれを止めようとしていた雛鶴さんが私の方に顔を向けた。
緊張を紛らわせる為、ごくりと一度唾を飲み込み、座卓の錠剤に視線を送りながら、
「男の人に愛されるって…どんな感じですか…?」
意を決して3人にそう尋ねた。