第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「…はい」
天元さんに返事をした私は、その場で飛び跳ねてみたり、日輪刀を振ってみたり、クナイを上に投げて取ってみたり、いつもの感覚と、いま現在秘薬を服用している時の感覚を、色んなことを試しながら比べてみる。
最後に
ふぅぅぅぅぅう
すぅぅぅぅぅう
と深く呼吸をし
……うん…型は出してみないとなんとも言えないけど…なんとなく、身体の感じは掴めたかも
「お待たせしてすみません。もう大丈夫です」
天元さん、それから風柱様に向けそう言った。天元さんは風柱様の方へと顔を向け
「始めるぜ?」
真剣な表情を浮かべながらそう問いかけた。すると風柱様は
「あァ…さっさと始めろやァ」
鋭い三白眼を大きく見開き、私を威圧して来た。
……すごい気迫…さっきはやっぱり多少なりとも手加減されてたんだろうな…
ビリビリと肌に痺れすら感じるその威圧感に、普段の私なら圧倒されていたかもしれない。けれども秘薬の興奮作用のせいなのか、焦りや恐怖の感情が湧いてくることはない。
「よし。今から10秒後に開始だ……」
天元さんはそう言うと、再び懐中時計を取り出し、その文字盤へ視線を向けた。
私は先の手合わせと同じように日輪刀を構え、姿勢を可能な限り低くし
シィィィィィ
呼吸を深めながら、風柱様をまっすぐと見据える。
……最初の型はさっきと同じ…そこで、型の感覚も掴んでみせる…!
「……………3、2、1、始めっ!!!」
天元さんの合図が終わった直後
「雷の呼吸壱ノ型…霹靂一閃っ!!!」
私は、1度目のそれと同じように、風柱様へとまっすぐ突っ込んでいった。
カァァァァァンッ!
「…っ!?」
私が取った動きも、選んだ型も1度目と全く同じだが
ズズズズズズッ
私の木刀を受けた風柱様の様子だけは、違っていた。
……っすごい…私…力で押し負けてない…!
1度目はほぼ動かなかった風柱様の位置は、草履5足分ほど後退しており、それが私の放った型の威力が上がっていることをはっきりと指し示していた。