第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
その行為に、若干の苛立ちのようなものを感じたものの
「…確かに、どんどん身体が熱くなってきて…なんだろう…じっとしていられないと言うか、身体を動かしたくてうずうずすると言うか…そんな不思議な感覚です!」
それ以上に、どんどん変化していく自分の身体の方が気になって仕方ない。
「だろ?忍の秘薬は、頭と身体を興奮状態にして、同時に筋力増強効果がある諸々のもんで身体を強化する材料から成る。ちなみに材料からして、身体に害が残るもんがねぇことは確かだ。納得がいかねぇ奴がいたら、胡蝶に材料一覧でも渡しておくから後で聞け」
天元さんのその言葉に
「「…………」」
反対派であったしのぶさん、そして蛇柱様も何も言葉を発しなかった。
「よし。それじゃあ次は、実際に秘薬の効果でどれだけお前の身体能力が上がったかの確認だ。不死川、鈴音。お前らにはこれから最初に説明した通り、秘薬を飲む前と同じように手合わせをしてもらう。さっきと同じように距離を取れ」
「…はい」
風柱様は特に反応は示さなかったものの、天元さんの指示通り先の手合わせが始まった位置へと移動していった。
私も風柱様に倣い、風柱様と対面になる位置へと移動する。けれども
……歩く感覚も…少し違う
私は一旦立ち止まり
「天元さん」
私の一挙一動を観察するかのように鋭い視線を寄越してくる天元さんの方へと振り返った。
「なんだ」
「……少しだけ、身体の感覚を掴むための時間をもらえないですか?」
歩いただけで感じる身体の変化だ。呼吸を使おうものなら、相当な変化を感じるに違いない。自分の身体の変化を全く把握していない状態では、いくら身体能力が向上していたとしても、風柱様のような強い相手には到底通用するとは思えない。
天元さんはしばらく黙って考える素振りを見せた後
「…2分だ。2分で掴め」
私に向け鋭い視線を寄越しながらそう言った。