第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「肩の痛みはどうだ?」
天元さんにそう問われ
…あれ…そういえばズキズキする感じが…ない
つい先程まであれほど痛かったはずの肩の痛みを全くと言っていいほどに感じなくなり
「…っ…痛く…ないです…!」
私は目を大きく見開きながら天元さんのそれを見た。そんな私の反応に、天元さんは
「俺様が調合した薬、派手に凄ぇだろ?」
得意気にニッと口の端を上げてみせた。けれども、その後私の肩を指差し
「だが傷が治ってる訳じゃねぇ。あんま調子に乗って触ってると後が痛むぜ?」
眉間に僅かな皺を寄せながらそう言った。
「治っていないのであれば、そいつが痛みを感じなくなった理由はなんだ?」
蛇柱様のその問いに答えたのは
「"アドレナリン作用"……ですか?」
天元さんではなく
「流石。医療の心得があるやつは違うな」
胡蝶様だった。
「"あどれなりん"とはなんだ!?すまないが俺は横文字が苦手でな!わかるように説明してもらいたい!」
杏寿郎さんのその言葉に、恋柱様、それから今までほとんど反応を見せて来なかった水柱様も同意するように反応を見せた。
「皆さんおそらく経験がおありかと思いますが、戦いの最中怪我を負っても、その戦いが続いている間は不思議と痛みを感じないことがあります。人間は、自らの命が危険にさらされた際、自然とその命を守る状態になれるよう脳が働くようになっているんです」
そんな胡蝶様の言葉に、思い当たる節があるのか、顎に手を当ててみたり、頷いてみたり、私を含め各々がなんらかの反応を示している。
「今現在秘薬の作用でこいつの心拍数は上がった状態だ。そうなれば自然と体温が上がって、脳も興奮状態に陥り、痛みを感じない…つぅよりも、痛みを気にしない状態になる。秘薬で無理矢理その"アドレナリン作用"ってやつを起こしてるわけ」
天元さんは私の頭頂部に手を置き、バシバシと無遠慮に叩きながらそう言った。