第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
フッと視界が暗くなり、陽の光を遮る大きな身体の方へと視線を向けると
「色々使ってこのざまかぁ…まぁ不死川相手だと考えれば、よくやったと思っといてやるよ」
僅かに不満げな表情をした天元さんがそう言いながら私の横にしゃがみこんだ。そして
「肩。見せてみろ」
私が肩を抑えるようにしている手をクっと顎で指しながらそう言った。
「……肩を…見せる…?」
肩を見せる。そのためには隊服のボタンをはずし、鎖骨辺りまで出さなければならない。
そんな行為は天元さんの前で何度もしてきた。故に恥ずかしいだとかそんな気持ちは微塵もない。風柱様が目の前にいようといなかろうと、それは変わらない。
だが今日、天元さんに鎖骨周辺を見られるわけにはいかない。なぜなら私の鎖骨には、杏寿郎さんが咲かせた赤い花がまだまだ鮮やかに咲き誇っているからだ。
……虫刺されなんて……そんな嘘、通じるわけない
私は肩を抑えていた手を隊服のボタンの方へとさっと移し
「…っ平気です!そこまで痛くないので!」
絶対に見られてなるものかという意思をたっぷりと込めながら天元さんの目をジッと見返す。
すると目の前にいた風柱様が
「カエルが潰れたみてェな声出しておいて、何がそこまで痛くねェだ」
”お前ェみたいなひょろっこい女の肩見ても何も感じねェわ”なんてことをぼそりと呟きながらくるりと反対方向を向いた。
その口から吐かれた言葉はなんとも乱暴に聞こえたものの、私のことを気遣って背中を向けてくれた行動に
……この人も…実は優しい人なのかな…?
と、僅かながらも感じられた。
「ったく。余計な気ぃ遣わせんじゃねぇよ」
そう言いながらヌッと伸ばされた天元さんの腕をサラリと避け
「…っ本当に大丈夫ですから!それに、このままの状態で秘薬を飲んだ方が、その効果がわかりやすいですよね!?怪我の痛みを誤魔化してくれるような効果もあるって、確か言ってましたもんね!?」
特に激しい肩の痛みに耐えながら立ち上がった。