第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「お喋りは済んだかァ?」
風柱様は、右手に持った木刀で自身の右肩をバシバシと打ちながらゆっくりと私の方へと近づいてくる。
「…はい。時間をいただきありがとうございました」
私がそう礼を述べると
「あァ?何言ってんだテメェ」
風柱様は自身の気遣いをしらばっくれているのか、ジロリと私を鋭く睨みながらそう言った。そして
「無駄なお喋りはしまいだ…とっとと掛かって来いやァ!」
木刀の切先を私へと真っ直ぐに向けてきた。
「…っはい!」
私は弱い。風柱様からすれば、その辺にいる新人隊士とそう変わらないかもしれない。でもそれは、"力と力のぶつけ合いをした場合"の話である。
……私には…私の培って来た経験と…戦法がある。それでなんとな残り4分…くらいついてみせるんだから…!
私は左手に持っていた木刀をベルトに刺し
「…っ行きます!」
太腿からクナイを一本取り出しながら風柱様へと向かい跳躍した。
バキッ
「…っい゛」
疲労と痺れで力が入らず、受け止めきれなかった風柱様の打撃が私の左肩を捉えたその時
「…っそこまでだ!」
天元さんが、長い長い5分間の手合わせの終了を告げた。
私はもろに入った打撃で痛む肩を抑えながら
……なんとか…5分間耐えられた…
失神させられることなく手合わせが終わったことに酷く安堵していた。それでも、身体はすでにボロボロで
……この後…また5分あるんだよね?…このままじゃ絶対に無理でしょ…
今現在押さえている肩だけでなく、腹部や足に打ち込まれた箇所もズキズキと痛んだ(どこも折れずに済んでいることが奇跡だと思う)。クナイと閃光玉を使えた為、この程度で済んだものの、もし使うことを許可されていなければ、確実に立ち上がれない状態にされていただろう。
しゃがみ込む私の一方で、風柱様は余裕な表情を浮かべながら私を見下ろしていた。