第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
…あと4分…絶対にもたない!
まだたった1分間の手合わせではあるが、自分と風柱様の恐ろしいまでの力の差を理解するのには十分だった。
私は元々こういった、力と力のぶつけ合いのような戦法は非常に苦手である。そもその、天元さんからそんな稽古を受けたこともない。
この風柱様との手合わせが、私と風柱様の身体能力の差を見せる為のものだという事は理解している。
それでも、残り後4分。このまま力と力のぶつけ合いを強いられようものなら、私に待つのは全身痣だらけ、打ち身だらけ、下手をしたら骨折…という目も当てられないような未来である。
「私の力量で4分間持ちこたえるのは無理です!せめてクナイを使わせてください!」
風柱様は既に体制を整え終えたようだが、私に天元さんと話す時間をくれているようで、木刀で左手のひらをバシバシと叩きながらこちらの様子をジッとうかがっていた。
「踏ん張れこの馬鹿弟子!と、言いたいところではあるが…しゃぁねぇな」
それもう言われてるのと一緒なんですけど
師範から受ける本日2度目の理不尽な扱いに、私は心の中で文句を言いながら顔をしかめた。
「不死川ぁ!」
「…なんだァ」
「そいつにクナイ使わせてもいいか?」
天元さんのその問いに
「好きにしろォ」
風柱様が間髪なく答える。
「だとよ」
「ありがとうございます!ではついでに閃光玉と煙玉もお願いします」
風柱様の答えにこれ幸いと更なる要求をしてみると
「閃光玉に煙玉だァ?よくわかんねェが、勝手に使えェ」
"使おうが使わなかろうが自分の優勢に変わりはない"と、言わんばかりの答えが返って来た。
風柱様本人の許可を得た私は、念の為、師範である天元さんの顔にチラリと視線を寄越し、その反応を確かめる。
「ったく仕方ねェな。おい鈴音!万が一クナイも閃光玉も使って不死川にボコボコにされてみろ。しばらく嫁たちに会うの禁止だ!」
告げられその罰の内容に
「……そんなの、絶対嫌です!」
私は、木刀をギリッと握り直しながら答えた。