第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
面倒くさそうに天を仰ぎながら風柱様がこちらへと向かって来る。それから私の隣に人2人分ほどの隙間を開け立ち止まると、ジッと鋭い三白眼で私を見下ろしてきた。
杏寿郎さんと天元さん、体格のいい男2人のお陰で随分と慣れたとは言え
”体格のいい男性が苦手”
という私の意識が完全に消えた訳ではない。
……っ怖!!!
辛うじて表情に出すことは堪えたが、思わず助けを求めるようにしのぶさんの顔を見てしまう。するとしのぶさんは
「大丈夫です。取って食われやしませんよぉ」
と、満面の笑みを浮かべながら言った。そんなしのぶさんの言葉に、なんだか余計恐怖を煽られた気がし、眉間に皺を寄せてしまう。
けれども
「さぁ鈴音さん。そんな顔をしている場合じゃありませんよ?私を納得させたければ、あなたの実力と、秘薬の効果とやらを示してください」
私を試すようなその口ぶりに
「……もちろんです」
私の心にフッと炎が灯ったような気がした。
「…よし。察しはついてると思うが、念のため説明する。これから不死川と鈴音に手合わせをしてもらう。初めの5分はそのまま。次は鈴音が秘薬を服用しての5分だ」
……秘薬なしで…5分…
風柱様相手に果たして5分も持ちこたえることが出来るのか。正直に言ってしまうと自信がなかった。
「5分だァ?お前、こいつが5分間も耐えられると思ってんのかァ?」
そう思ったのは風柱様も同じだったようで、まるで馬鹿にするような口調で言われてしまう。
すると
「はぁ!?そいつはド派手な祭りの神、宇髄天元様直々に鍛えた奴だ!なめんじゃねぇ!」
先ほどまでの理路整然な様子は何処へ行ってしまったのか…天元さんはギャーギャーと騒ぎながら風柱様に言い返していた。それから私の頭をその大きな手で鷲掴みにし
「おい鈴音!5分も持たねぇなんざ天地がひっくり返っても許さねぇからなぁ?」
「…っ痛…痛いです!…わかってますよぉ!!!」
ギリギリと力を込め、私を脅すような口調でそう言った。