第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
決定事項のように言った天元さんに
「勝手に決めないで下さい」
「そうだ俺はまだ納得していない」
しのぶさんと蛇柱様が拒絶の意を示した。
「同意が得られないまま秘薬を飲むことを強要することは出来ない。でも、秘薬の効果を得ることなくして誰の命も欠かさず戦い続けることは難しい。さて、どうようかな天元?」
問題提起をするようにそう言ったお館様に対し天元さんが発した言葉は
「鈴音」
私の名前だった。
天元さんが私の名を呼んだことで、この場にいる全員の視線が私の方へと集まってくる。
……一斉にこっちを見ないでよ…緊張するじゃない…!
動揺し、上ずりそうになる声をグッと抑え
「…はい」
返事をすると
「ちょっと出て来い。んでここに立て」
天元さんは、天元さんの右斜め前あたりを指さしながらそう言った。
私はその指示に素直に従い、立ち上がり天元さんの指さしたところまで向かう。
天元さんは私が指示した場所に到着したことを確認すると、私の身体をぐるりと180度回転させ
「知っていると思うがこいつは俺の継子だ。見ての通り小柄で非力。ぶっちゃけめっちゃくちゃ弱ぇ」
「………」
なんと私の悪口紛いのことを言い始めた。もちろんそんな天元さんの発言に杏寿郎さんが黙っていられるはずもなく
「宇髄!鈴音は決して弱くない!非力であることは確かだが、そこを補う頭と速さがある!それはお前が一番知っているだろう!」
ほぼ予想した通り天元さんへと嚙みついた。そんな杏寿郎さんに
「だぁぁあ!んなもんわかってるっつうの!いいからお前ちょっと黙ってろ!話が進まねぇ!」
天元さんは明らかに面倒くさそうな顔をしながらそう言った。けれども杏寿郎さんはまだ言い足りないらしく
”だがしかし”
と言葉を続けようとしていたようだ。
それを止めたのは
「杏寿郎」
他でもないお館様だった。