第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
それからは程なくし
「「お館様のお成りです」」
左右をご息女様に、そして後ろをあまね様に支えられたお館様が私たちの前に現れた。
……お館様…今日は…起き上がれるんだ……良かった
お館様の屋敷まで杏寿郎さんと共に来た私だが、肩書はあくまでも音柱である天元さんの継子だ。ましてや今回のこの会議は、秘薬に関する話をする為に執り行われる臨時のそれである。
今回特別に、一般隊士である私が柱合会議に呼ばれることになったが、私は本来柱とは全く身分の違う人間であり、この場には相応しくない。
私はなるべく邪魔にならないよう、横一列に並ぶ柱達、その中でも天元さんの背後に付き従うように跪いた。
「…おはよう。今日は急なお願いにも関わらず、みんな来てくれてありがとう」
支えられなんとか自力で立ってはいたものの、その顔色はもちろんのこと、声色もどう聴いても具合の悪そうなそれで、倒れてはしまわないかと不安になる程だった。そう思っていたのは私だけではなかったようで
「お館様。秘薬の説明であれば俺がします。ですから無理をせず、お部屋に戻って下さい」
天元さんがお館様の方へと真っ直ぐ顔を向けながらそう言った。けれども
「ありがとう天元。でも、そうはいかないよ」
お館様はそう言うと、天元さんへと向けていた顔をスッと横にずらし
「天元と鈴音が危険を犯して手に入れた秘薬を、みんなが納得して使ってくれるように、私からきちんと話をしなくちゃならないからね」
横一連に並ぶ柱の面々の顔を順番に見るように右から左へとゆっくりと動かしていった。そして一番端にいた水柱様まで行くと
「鈴音」
私の名を呼んだ。
「…っ…はい!」
まさか自分の名が呼ばれるとは思っていなかった私は、すぐに反応することが出来ず、ひと呼吸遅れて返事をしてしまう。