第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「もともとぐちゃぐちゃだろ?気にすんな」
「そんなことありません。失礼ですよ?」
「へぃへぃ悪かったよ」
天元さんは最後に私の頭をポンっと軽く叩くと
「…あいつらがお前のことめっちゃ心配してる。後で顔見せに行ってやってくれ」
珍しく、穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。
"鈴音大丈夫?"
"あんたはまた無理して!"
"もぉぉお!心配したんですからねぇ!"
なんて言う3人の顔が鮮明に思い浮かび
……嬉しいかも
不謹慎と思いながらも、頬が緩むのを抑えられなかった。天元さんは、そんな私の表情の変化を見逃さなかったようで
「喜んでんじゃねぇよ。心配されて喜んでたなんて知ったら、今度こそあいつら怒るぜ?あいつらに本気で怒られてみろ。マジで怖ぇからな?」
さも呆れたと言わんばかりの顔でそう言われてしまった。
その時
「ほらほら宇髄さん。そろそろ鈴音さんの頭から手を離さないと、煉獄さんがすごい顔になってますよ」
胡蝶様の楽しそうな声が聞こえ、私と天元さんは同時に杏寿郎さんのいる方へと視線を向けた。
すると視界に入ってきたのは
……そんな目で…見なくても…
両腕を組み、ムッとした顔をしながらこちらを睨んでいる杏寿郎さんの姿だった。
そんな杏寿郎さんの様子を、杏寿郎さんの側にいる風柱様と蛇柱様が物珍しそうな顔でジッと見ていた(そのさらに奥に、いつの間に来たのか岩柱様、霞柱様、そして水柱様の姿も見えたが、こちらにはあまり興味がないらしく各々お館様のお屋敷の方に身体を向けたたずんでいた)。
「……私、煉獄さんのあんな顔…初めて見たわ」
「不死川さんと伊黒さんも、甘露寺さんと同じ感想を抱いているのでしょうね」
「あいつまじ拗らせすぎ。嫁がいる俺に嫉妬心なんか抱くなっつぅの。つぅかお前、いい加減その手離せ。俺が煉獄に怒られんだろ」
そんな3人の言葉に
「……すみません」
謝りたくなってしまう私の気持ちをどうか理解して欲しい。